海外旅行で一番多いトラブルは、実は「スリ」です。
でも、狙われにくい持ち物と歩き方、そしてバッグの選び方を押さえれば、被害はぐっと減らせます。
本稿では「今日からできる工夫」を、道具・所作・考え方の3レイヤーで具体的に解説します。
行列に並ぶとき、地下鉄で立つとき、カフェで休むときなど、よくある場面ごとに手順を示すので、そのまま真似するだけでOKです。
旅の記憶を「ヒヤリ」ではなく「にっこり」に変えるための実践ガイドとしてご活用ください。
スリに狙われない「持ち物」の基本設計
現金・カードの最適な分散
海外では「財布ひとつに全財産」は御法度です。
現金は1日分×2〜3セットに小分けし、メインは体の前側のジッパーポケット、予備はバッグの奥、非常用は服の内側に分散します。
カードは国際ブランドを分けて2枚以上、うち1枚はホテルのセーフティボックスに待機させます。
とはいえ「分けすぎて把握できない」と混乱する声もあります。
そこで旅行前にチャック付き小袋に「今日使う分」を組んでおくと、朝にサッと差し替えるだけで管理が楽です。
レシートと小銭は、その場で財布に戻さずサコッシュの外ポケットに一時退避し、落ち着いた場所で仕分けます。
ジャラッと手元が長くなる瞬間こそ狙われるため、会計の滞留時間を短くするのがコツです。
「スマホだけで決済すれば安全」という意見もありますが、通信障害や端末盗難で詰む恐れがあります。
現金は「1日あたり必要額+予備20%」を目安にし、ホテルに残す分を含めて計画的に持ち歩きましょう。
両替は空港での最低限と、街中の評判の良い両替所の併用が堅実です。
服と装備で「開けにくい」を作る
衣服は「閉じる仕組み」が多いものを選びます。
前面にジッパー付きポケットがあるジャケット、内ポケットにボタンがあるシャツは、それだけで防御性能が上がります。
ズボンは前開きの深いポケットを、さらに小さなコインポケットと重ね使いすると、指を差し込まれにくくなります。
加えて、薄型のスキミング防止カードホルダーを内ポケットに忍ばせると、電車内での接触型被害への抑止になります。
「ベルトポーチは便利」と思われがちですが、背面に回りやすく、視界から消えた瞬間が弱点です。
体の正面、かつ両手が触れやすい位置に収納を集中させると、触覚警戒網が広がります。
鍵は分離キーホルダーで二系統に分け、ホテル用と手回り用で役割を固定します。
金属音が「チャリン」と目立つ束は視線を集めやすいので、静音タイプのキーケースでまとめるとよいです。
雨具は折りたたみ傘ではなく軽量レインジャケットが安全です。
片手がふさがる状況は狙われやすいため、両手フリーを基本にしましょう。
荷物の見せ方・持ち方のルール
「取りやすい場所に、取りたいものを置かない」が鉄則です。
パスポートと主要カードは、バッグ内の最奥ポケットに一貫して格納します。
同じものが複数の場所にあると「どこだったっけ」と視線が泳ぎがちで、その瞬間のスキが危険です。
歩行中は、ジッパーの引き手を片手で軽くつまんでおく「指ロック」を習慣化します。
地図や翻訳アプリを見るときは、壁や柱を背にして停止し、バッグの開口部を体の前面へ回します。
肩掛けは「斜め掛け+短め」で、体にピタッと密着させ、ストラップは金属ワイヤー入りやカットレジスタント素材が有効です。
「ちょっと写真だけ」と腕を伸ばしたときにバッグが背面へ回らない長さに調整しましょう。
歩き方・立ち振る舞いの実践術
視線と歩幅が生む「隙のなさ」
スリは「迷っている人」を好みます。
視線がキョロキョロ泳ぎ、歩幅が不規則だと、接触のタイミングを取りやすいからです。
目的地までの大まかなルートはホテルのWi-Fiでオフライン保存し、交差点ごとの細部は壁際で確認します。
歩くときは「3歩先を見る」意識で、足取りを一定にします。
交差点では立ち止まらず、渡り切ってから端で立ち読みするのが安全です。
写真撮影は「背中を守る」姿勢が要です。
建物の壁、ショーウィンドウ、柵を背にして構え、バッグは体の前、ストラップに手を添えます。
しゃがむと視界が狭くなるため、屈む代わりにズームを使う、または短時間で済ませます。
「撮ってあげましょう」と近づく人には、笑顔で手を振って断るのが無難です。
どうしても頼むなら、カメラのストラップを自分の首に掛けたままシャッターを押してもらう方式が安全です。
混雑・撮影・飲食シーンの対応
混雑は「接触の正当化」を生みます。
マーケットや祭りでは、背面ポケットは空にし、スマホは首かけストラップ+ロック画面で運用します。
支払い時は、身体を斜めにして開口部を壁側へ向け、財布は最小限だけ露出させます。
撮影に夢中になると、バッグが背面へクルッと回りがちです。
三脚は周囲の動線を塞ぎ、注意散漫を招くので、人出が多い場所では避けましょう。
カフェや屋台では、椅子の背にバッグを掛けないのが原則です。
テーブルの脚と自分の足首をストラップで軽く絡め「物理的な係留」を作ります。
床置きは、チェアと自分のふくらはぎでL字に挟むと視界に入れやすいです。
「すぐそこにいるから大丈夫」という油断が一番危険で、席を立つときは必ず全てを身につけ直します。
トレーの上にスマホと財布を同時に置かない、という小さなルールも効きます。
交通機関での防御ポジション
地下鉄やバスでは、ドア脇がもっとも狙われやすいです。
発車直前の押し込みで密着し、扉が開く瞬間に物を抜いてそのまま降りる、という逃走動線があるからです。
立つ位置は「車両中央のポール背後」がベターで、バッグは体前、開口部を下向きにします。
背負いリュックは混雑時だけ前掛けに切り替え、ストラップの長さを一段短くします。
「混んでいるから仕方ない」という反論もありますが、1両移動するだけで危険は大きく下がります。
乗降時は、ポケット類に軽く触れて中身の所在を確かめる「タッチ点検」を癖づけましょう。
車内で眠るときは、ファスナーに小型カラビナを掛ける簡易ロックが有効です。
「カチッ」と物理的な抵抗があるだけで、狙いが逸れやすくなります。
バッグ選びと具体セッティング
体の前で固定できるバッグ
バッグは「前で守れるか」を基準に選びます。
最有力はスリング型や小型のクロスボディで、体の中心に収まるサイズが扱いやすいです。
ファスナーはダブルで、引き手にミニカラビナやキーロックが掛けられるものを推奨します。
生地は切り裂き耐性のあるリップストップや高密度ナイロンが安心です。
「大きい方が便利」という考えもありますが、容量が増えるほど内部探索に時間がかかり、その時間が隙を生みます。
1日の行動に必要な最小容量へ絞りましょう。
リュックを使う場合は、サイドポケットに貴重品を置かない、チェストストラップで前ズレを防ぐ、メイン開口部に小型ロックを付ける、の三点で防御力が上がります。
メッセンジャーは蓋の面積が広く、面ファスナー音「ビリッ」が抑止になる一方、背面回りがちなのでストラップ短めが前提です。
内部レイアウトとダミー財布
内部は「三層構造」が基本です。
最奥がパスポートと非常用カード、中層が当日分の現金と1枚のカード、手前が一時収納の小物です。
この順番を崩さないことで、手探りで迷う時間が減り、周囲に注意を払える余白ができます。
ダミー財布は、少額紙幣と期限切れカードを入れた薄型のものを前ポケットへ。
万一の圧力に対して、差し出してもダメージが少ない逃げ道になります。
とはいえ過度な演出は不要で、日常的に取り出す小銭入れと区別しやすくしておくと運用がスムーズです。
ジッパープルには小さな鈴やタグを付け、触れられたときの微振動や音で気づけるようにします。
音が気になる場合は、指先の感触で分かるシリコンタグが静かで実用的です。
ペットボトルは外ポケットではなく内部へ入れ、開口部付近の重さを減らすと、こじ開け抵抗が上がります。
子連れ・複数人での役割分担
家族や友人と行動する場合は「誰が何を守るか」を決めます。
チケットやパスポートの保管担当、会計担当、外周警戒担当の三役に分けると、全員の注意が一点に集まりません。
ベビーカー使用時は、荷物をハンドルにぶら下げないこと。
重みで転倒リスクがあるうえ、後方から荷物ごと外されやすいからです。
シート下の収納にカラビナで係留し、ストラップは内側にまとめます。
子どもには首かけの小銭入れではなく、ファスナー付きポーチを服の内側に装着させます。
「自分のものは自分で」を練習させると、滞在中の行動がスムーズです。
スリの手口別カウンター
囲み・ぶつかり・荷物乗せへの対処
典型は「複数人での囲み」と「わざとぶつかる」手口です。
一人が前で立ち止まり、後ろから別の一人が押すように接近し、圧縮の瞬間に抜き取ります。
対策は、肩をすぼめてバッグを胸に固定し、横歩きで圧力の中心から抜けることです。
その際、相手の腕や胸元を掴まず、自分の荷物だけを確保して静かに退きます。
過度に反応すると相手の言い訳が発生し、混乱を作られます。
「荷物を上に乗せる」手口もあります。
新聞や上着をバッグにかぶせ、下で手を動かす方式です。
違和感を覚えたら、すぐにバッグを前へ回し、上に乗った物を手で払い落とします。
声を荒げず「No, thanks」とだけ言い、視線を周囲へ走らせて仲間の位置を確認します。
一人に集中しないのがコツです。
署名・リボン・汚れ指摘などの注意逸らし
「寄付の署名」「腕にリボン」「服が汚れている」といった、人の善意や不安を突く誘導は世界中で見られます。
紙や板にサインをしている間、下で手が動きます。
対処は、足を止めずに手を胸の位置で軽く上げ「大丈夫です」と丁寧に断ることです。
仮に服の汚れを指摘されたら、まず壁や柱に背をつけ、バッグを前に回してから確認します。
相手に背中や開口部を見せない順番を固定します。
「親切にしてくれているのに失礼では」と感じるかもしれませんが、安全が最優先です。
笑顔と短い言葉で、会話を長引かせないのが防御になります。
カフェ・レストランの席で
座った瞬間に緩むのが人の常です。
テーブルの端にバッグを置き、スマホを上に重ねる配置は最悪です。
対策は、ストラップで家具に係留し、開口部を自分の膝側へ向けること。
店員や周囲の人が通る動線に荷物を置かないのも重要です。
支払いのときは、トレーを受け取ってからバッグを開くのではなく、先にバッグを開いて必要物を手に持ってからレジへ向かいます。
動作を逆順にするだけで、開口部が開いている時間が半減します。
テラス席では風と視線の抜けを考慮し、荷物は常に体の内側へ。
「サッ」と持ち去られる直線動線を遮る配置を作りましょう。
ATM・両替所での立ち回り
ATMは「集中と露出」が同時に起きます。
背後に人が並ぶと視線がそちらへ泳ぎがちで、カードや現金を抜かれる一因になります。
並ぶ前に周囲を一巡見回し、鏡やガラスの反射で背後確認できる機械を選びます。
入力時は片肘で開口部を軽くガードし、取り出した現金は「その場で数えない」を徹底します。
小袋にサッと入れて離れ、別の安全な場所で仕分けましょう。
両替所では、カウンターに荷物を置きっぱなしにするのが典型的な隙です。
ストラップを手首にかけ、バッグの口は閉じたまま必要書類だけを手に持ちます。
「レートが良い」と誘われても、路上や店舗外での受け渡しはNGです。
為替の小得より安全の大損を避ける判断が賢明です。
配車アプリ・タクシー乗降時
乗り込み前の数秒が狙われやすい時間帯です。
車両番号と運転手名をアプリ上で確認し、ドアを開ける前に周囲の人の動きが「スッ」と近づいていないかを見ます。
荷物は必ず先に自分の太もも側へ引き入れ、トランクに大きな荷物を入れる場合も、貴重品は体の前に固定したままにします。
窓を開けたままスマホを手に持つと、信号待ちでひったくられる事例が多いです。
ロック画面のまま膝上のバッグに一時退避し、窓は半開以下にとどめます。
夜間・イベントでの優先事項
夜市や花火大会など、視覚的刺激が多い場は注意が分散しがちです。
合図は「集合場所を先に決めておく」「単独行動は5分以内」「写真担当・支払い担当を分ける」の三つです。
暗所では黒いバッグが視界に埋もれやすいので、反射材のタグや小さなLEDクリップで「チラッ」と存在を可視化します。
アルコール摂取時は、会計額の確認と釣り銭の扱いを同行者がダブルチェックする運用に切り替えると安全性が上がります。
スマホ・カメラ・ガジェットの防御術
スマホの落下防止と「ロック前提」運用
スマホは「手に出した瞬間が最弱」です。
首かけストラップ+クイックリリースのケースを使い、胸の中央に吊る位置へ調整します。
取り出しは片手、戻しは必ず両手で「カチッ」と固定し、歩行中の操作は避けます。
ロック時間は最短、通知は内容非表示にして、画面点灯のたびに情報が読み取られないようにします。
顔認証はマスクやサングラスで誤作動する地域もあるため、PINコード運用を併用すると安心です。
写真撮影時のセッティング
カメラはストラップを体の対角線に通し、バッグの開口部は前に。
交換レンズは路上での入れ替えを避け、建物の中や壁際で短時間に済ませます。
三脚は「混雑×長時間×両手塞がる」の三重苦になりがちです。
どうしても使う場合は、同行者が周囲を半径1メートルで見張り、バッグは足首にストラップで係留しておきます。
レンズキャップやバッテリーなどの小物はポーチにまとめ、「カラカラ」と音で所在が分かる工夫も有効です。
イヤホン・ウェアラブルの扱い
ノイズキャンセリングは環境音を「スッ」と消してしまいます。
片耳だけにする、トランスペアレントモードで外音取り込みを常時オンにするなど、周囲の接近に気づける設定が必須です。
スマートウォッチの支払い機能は便利ですが、手首を人混みで高く掲げる動作は視線を集めます。
会計時のみサッと使い、日常は画面自動点灯をオフにして露出時間を減らします。
回線・データの備え
eSIMを事前に用意し、回線トラブル時の「連絡不能」を避けます。
端末の「紛失モード」「リモートワイプ」を旅前にテストし、Apple IDやGoogleアカウントの二段階認証コードの受け取り先も複数化します。
パスポート画像や保険証券は暗号化クラウドに保管し、オフラインでも開けるPDFを1つ用意しておくと、いざという時に「パッ」と提示できます。
都市・地域別の注意点
ヨーロッパ主要都市
旧市街の狭い路地や観光列車、広場の大道芸周辺はスリの活動密度が高い傾向があります。
「署名」「募金」「リボン」などの接近話法が多く、集団で役割分担する手口が目立ちます。
地下鉄はドア脇を避け、ホームでは線路側ではなく壁側で待機するのが定石です。
冬季は厚着でポケットが増えるぶん、どこに貴重品があるか自分でも迷いがちです。
前述の三層収納ルールを厳格に適用しましょう。
北米の都市部
店舗や施設のセキュリティは比較的整っていますが、車上荒らしが多い地域があります。
レンタカー内に荷物を見える形で置かない、トランクに入れる作業は駐車直前ではなく、離れた場所で行うのがコツです。
巨大モールでは、フードコート席での荷物放置が典型的な被害パターンです。
席取り係と会計係を分け、荷物は常に身体のどこか1点で係留しておきます。
東南アジア・南アジア
バイクの二人乗りによるひったくりが一定数あります。
車道側にスマホやバッグを出さない歩行ラインを選び、路肩ではなく建物側を歩きます。
ナイトマーケットは光量が豊富でも陰影が強く、視界が「パッ」と暗転する箇所が生まれます。
値札交渉に夢中になった瞬間が狙われやすいので、会計係と商品選定係を分担すると安全です。
中南米
バス停や長距離バスターミナルでの置き引きが多い印象です。
プラットフォームでは荷物を体の前に抱え、背面と床の両方からアプローチされない姿勢を取ります。
高地では疲労で注意が散るため、移動日は観光を詰め込みすぎないスケジュールが防御にもつながります。
ホテル・宿泊時の予防保全
チェックインから部屋まで
フロントでパスポートを取り出す動作は人目に付きやすいです。
透明ケースからスッと出せるセカンドケースを用い、原本の露出時間を最短化します。
エレベーターは混雑便を避け、できれば壁側を背にして立ち、カードキーは取り出しやすいが落としにくい縦型ポケットへ固定します。
室内のセーフティゾーン構築
入室直後に「荷物の定位置」を決めます。
ベッド足元や通路は避け、クローゼット下段の奥など、視界に入りにくいゾーンを選びます。
パスポートと非常用カードはセーフティボックスに入れ、暗証は誕生日や部屋番号を避けます。
部屋を出る前に、ドアノブの内側へ小さな輪ゴムを掛け「出発時チェック合図」を作ると、鍵の取り忘れが減ります。
朝の出発・夜の帰還ルーチン
朝は「貴重品3点タッチ(パスポート・カード・スマホ)」を声に出さず指先だけで確認します。
夜は疲労で注意が落ちるため、ロビー手前で一旦立ち止まり、バッグの開口部を閉じる、ストラップ長を短くする、財布を奥へ戻す、の3動作を固定化します。
シャワー中は浴室にスマホを持ち込まず、枕カバーの中に一時保管するなど、濡れによる緊急連絡不能を避けます。
もし被害に遭ったら:最初の60分
優先順位の再確認
盗難直後は脳が「ザワッ」と混乱します。
しかし優先順位は明確です。
①身の安全確保、②カードと回線の停止、③身分証の二次被害抑止、④記録の確保、の順です。
周囲に危険が残る場合は即時にその場を離れ、明るく人の多い場所で体勢を立て直します。
カード・回線・アプリの停止
クレジットカードはアプリか国際通話で停止し、警察への届出番号は後からでも構いません。
スマホが盗まれた場合は、他端末から紛失モードにし、位置情報のスクリーンショットを確保します。
二段階認証のバックアップコードは、紙で別所に保管していれば即座にログインが可能です。
交通系ICや決済アプリも、一覧から一括サインアウトを実行します。
記録と証明の取り方
被害場所・日時・状況をメモに残し、周囲の看板や店名を「パシャッ」と写真で記録します。
防犯カメラの所在を店員に尋ねれば、後日の証拠確保がスムーズです。
保険請求にはポリスレポートが求められることが多いので、最寄りの交番や観光警察に出向きます。
英語に自信がなくても、事前に用意したテンプレート(盗難品名・色・特徴・場所・時刻)を見せれば手続きが早まります。
準備チェックリストと練習ドリル
出発前1週間チェック
・旅程アプリで移動ルートをオフライン保存。
・eSIMと保険証券、パスポート控えを暗号化クラウドへ。
・財布はメインとダミーに分割し、小袋に1日分セットを作成。
・バッグ類にカラビナ、シリコンタグ、簡易ロックを装着。
・リモートワイプの事前テストを実施。
・現地緊急連絡先と大使館連絡先をメモに印刷。
毎朝の出発前30秒ルーチン
「3点タッチ→指ロック→ルート確認→ストラップ短縮→現金パック更新」の順で実行します。
鏡の前で一度、バッグ開口部が前を向いているかをチェックし、ジッパー引き手を軽くつまんで「よし」と確認します。
同行者がいる場合は相互点検を5秒で済ませます。
家族・友人と共有する情報
集合場所、ホテル名、現地SIM番号、保険番号、位置共有の可否を事前に合意します。
グループチャットの固定メッセージに、パスポート控えの保存先や紛失時の手順を簡潔に記しておくと、いざという時に慌てません。
コストと道具の目安
最低限これだけ
・カットレジスタント素材のスリングバッグ。
・ミニカラビナ2個と簡易ワイヤーロック1つ。
・首かけスマホストラップと落下防止リング。
・ジッパータグ(鈴 or シリコン)。
・チャック付き小袋(1日分セット用)数枚。
これらは合計でも比較的手頃で、費用対効果が高い装備です。
あったら便利
・RFID対応カードホルダー。
・反射タグまたは小型LEDクリップ。
・チェストストラップ付リュック(日数が長い旅向け)。
・翻訳メモのカード。
・軽量レインジャケット。
携行重量を増やしすぎない範囲で、旅程に合わせて取捨選択します。
逆に不要なもの
・大容量の長財布(露出時間が長い)。
・派手なブランドロゴが大きいバッグ(視線を集めやすい)。
・ベルトポーチの背面装着(死角化しやすい)。
・大量のキーリングやジャラ音のする装飾(注目を集める)。
見た目の安心感より、運用の手早さを優先します。
よくある勘違いQ&A
現金はほとんど持たずにカードだけで大丈夫?
都市部では可能な場所もありますが、停電や回線不良、端末盗難に弱いです。
1日分+予備を小袋に分け、カードと併用が安全です。
ウエストポーチなら絶対安全?
背面に回ると死角になり、群衆での開口が容易です。
体の前で固定できるスリング型やクロスボディが無難です。
リュックを前抱えは「ダサい」?
安全を最優先する場面では合理的です。
混雑区間のみ前抱えに切り替え、撮影時は背負い直す運用なら見た目も両立します。
スマホで地図を見ながら歩くのは危険?
停止して壁を背に確認すれば問題は大幅に減ります。
歩行中の操作は避け、音声案内や振動ナビを活用しましょう。
ダミー財布って本当に役立つ?
強奪時に被害を最小化する逃げ道として意味があります。
日常用の小銭入れと混同しない色や形で運用してください。
セーフティボックスは信用していい?
基本的には有効な保管手段です。
とはいえ暗証は単純な数字を避け、パスポート原本は常時携行しない方針との併用が前提です。
子連れ旅で気をつけることは?
ベビーカーのハンドル吊りは厳禁です。
係留と内側収納、役割分担の三点で守りを固めます。
夜のバーやクラブでは?
入場前に貴重品を最小構成へ。
会計はまとめ払い、席を離れる際は全装備を一度身につけ直すのが鉄則です。
まとめ
旅行の自由は、安心が支えます。
狙われない持ち物の配置、歩き方のリズム、そして「前で守れる」バッグ選びを組み合わせれば、リスクは目に見えて減ります。
今日からできるのは、現金の小分けと3点タッチ、ストラップを短めにする小さな工夫です。
もしもの時の手順も、出発前に1回だけ声に出さず指でなぞっておけば、いざ本番でも「スッ」と体が動きます。
次の旅では、写真を撮るたびに壁を背に、会計のたびに開口部を前に、という新しい習慣を試してください。
きっと、思い出はより軽やかに、笑顔はより鮮明になるはずです。