仕事・勉強

1on1が成果につながる質問リスト&議事録術

1on1がうまく回ると、チームの温度が一段上がり、目標達成のスピードもじわりと速まります。
とはいえ、毎回「最近どう?」で終わってしまい、成果に直結しないまま時間だけが過ぎることもあります。
本稿では、現場でそのまま使える「成果につながる質問リスト」と、会議後の行動を確実に引き出す「議事録術」を、具体例とテンプレートつきで解説します。
準備から運用、フォローの導線まで一本の線でつなげるので、読み終えたら今日から実装できます。
会話の流れがすっと決まり、沈黙が怖くなくなるはずです。

1on1のゴールと型を最初に合わせる

1on1は「評価面談」ではなく「成果を最大化するための共同作業」を進める時間です。
目的が曖昧だと、雑談と詰問の間で揺れてしまいます。
まずは二つのゴールを明文化します。

一つ目は、短期の成果に直結する障害を発見し、次の一手を合意することです。
ここでいう成果とは、数値だけでなく、顧客価値や品質、リードタイム短縮といった仕事のアウトカム全般を指します。

二つ目は、中長期の成長を設計することです。
スキル伸長や役割拡張、キャリア仮説を扱い、メンバーの自律を支えることが狙いです。

この二つを外さないために、会の型を固定します。
おすすめは「チェックイン→テーマ深掘り→合意と次の一手→チェックアウト」の4ステップです。
チェックインは1〜3分で体調と集中度を測る軽い問いかけに留めます。
テーマ深掘りは一本に絞ります。
広く浅くを避け、仕事の現場で観測可能な事実から始め、意味づけ、意思決定の順に進めます。
最後に合意を言語化し、誰が何をいつまでにやるかを具体化します。
チェックアウトでは気分と学びを一言で確認し、次回に引き継ぎます。

型の例:30分版

最初の3分で「今の集中度は10点満点でいくつですか」。
次の20分でテーマを一本化し、「事実→解釈→選択肢→決定」をたどります。
残り7分で「次の一手、期限、支援者、初手の時間」を確定します。
この配分は慣れればさらりと回せます。

質問の原則とアンチパターン

質問は「相手の思考を前に押すレール」です。
レールの質が会話の質を決めます。
原則は三つです。

一つ目は、開かれた問いで始め、スケール質問で芯を掴むことです。
「どこが一番うまくいっていますか」「10点満点で今は何点ですか」などが起点になります。
数字で掴むと、ふわりとした感想が具体に落ちます。

二つ目は、時系列を整えることです。
直近の事実から入り、因果を追うと、思い込みを避けられます。
「いつ、どこで、誰が、何を、どうした」の順で確認します。

三つ目は、選択肢を三案出すことです。
一案だと押し付けに見え、二案だと対立になります。
三案は比較の軸を生み、主体性を引き出します。

アンチパターンも押さえます。
「なぜ」を連発して詰問になる。
自分の解を示して誘導する。
評価や感情入りの言葉で萎縮させる。
これらは避けます。
代わりに「どの要因が効いていそうですか」「どの仮説を先に試しますか」に言い換えます。
語尾を柔らかく保ちつつ、行動に向けて収束させます。

具体化の三段跳び

最初に「事実」を確認します。
次に「意味づけ」を分けて話します。
最後に「次の一手」を決めます。
例として、商談失注のケースなら、「どの段階で止まりましたか」「相手は何を懸念と言いましたか」「三日以内に取れる打ち手は何ですか」と進めます。
会話のリズムがととのい、無駄な反省会になりません。

スケール質問の使いどころ

満足度、リスク、確信度、エネルギーの四つは数字化します。
「確信度は何割ですか」「リスクの大きさを1〜10で表すと」と聞きます。
数字が出たら「その数字を1つ上げるには何をしますか」と続けます。
小さな改善に落ちやすく、会議後の初手が決まります。

目標設定のための質問リスト

目標は「重要である」と「測れる」の二軸で設計します。
言い換えると、ビジネス価値に接続し、かつ観測可能であることが条件です。
質問の順番を整えて、合意形成を滑らかにします。

ビジネスゴールとの接続

「今期のチーム目標の中で、あなたの仕事が一番強く影響する指標はどれですか」。
「その指標に対して、あなたの役割で動かせるレバーは何ですか」。
「顧客視点で見ると、どんな変化が起きれば価値が最大化されたと言えますか」。
この三つで、個人の目標を会社の目的に紐づけます。
抽象から具体へ、視点を落とすのがコツです。

測定可能性の確認

「進捗を週次で観測するなら、どの数字か事実で追えますか」。
「結果指標と先行指標を一つずつ挙げると何になりますか」。
「ダッシュボードで自動にできる部分はどこですか」。
運用負荷を下げないと、目標は長続きしません。
測ること自体が仕事にならないよう最小限に絞ります。

優先順位づけ

「今のリソースでやめることを一つ決めるなら何ですか」。
「達成に一番効く上位20%のタスクは何ですか」。
「先に片づけると雪だるま式に楽になる前提条件は何ですか」。
優先順位は、やることを増やすのではなく、やめることを決める行為です。
会議中に具体的な停止リストを作り、関係者に周知します。

進捗・障害除去の質問リスト

進捗確認は、事実の列挙で始め、阻害要因を特定し、支援に落とし込みます。
感想ベースの報告を避けるだけで、同じ30分でも密度が変わります。

現状の把握

「直近7日の成果物は何ですか」。
「予定と実績の差はどこで生まれましたか」。
「関係者の反応でサインになっている出来事は何ですか」。
観測できる情報から対話を立ち上げると、合意が早くなります。

ボトルネック探索

「最も時間を奪っている工程はどれですか」。
「待ち時間、やり直し、依存関係のうち、どれが一番の癌ですか」。
「明日1時間だけ私が手伝えるなら、どこに入るのが一番効きますか」。
支援の当たり所をピンポイントで決めると、会後の動きが変わります。

リスクと支援要請

「起きると困ることベスト3は何ですか」。
「それぞれの事前策と事後策を一行で書くと何ですか」。
「誰の決裁や合意があると前に進みますか」。
リスクは言語化すると扱いやすくなります。
必要な支援をその場で自分事に引き取るのがマネージャーの仕事です。

振り返り・学びの質問リスト

振り返りは、失敗探しではなく学習の抽出です。
雰囲気を安全に保つと、情報量が跳ね上がります。

事実と解釈を分ける

「時系列の事実だけを2分で口頭メモしてみてください」。
「その事実に対する自分の解釈はどこに混ざりましたか」。
「第三者が見ても同じ結論になりますか」。
事実と解釈を分けるだけで、次の打ち手が見えます。

成功の再現性をつくる

「うまくいった要因は何ですか」。
「再現するなら、明日からどの手順と条件を固定しますか」。
「誰に横展開すると全体効果が最大になりますか」。
成功の分解は、組織の学習スピードを上げます。
静かに効く地味な勝ち筋を見逃さない姿勢が大切です。

失敗の安全な共有

「今回いちばん学びが大きかった失敗は何ですか」。
「次回それを避ける早期警戒のサインは何ですか」。
「小さく試すなら、どんな実験なら安全ですか」。
失敗は早く小さく燃やすのが鉄則です。
再発防止策より、検知の仕組みを先に置きます。

成長・キャリア&モチベーションの質問リスト

成長の会話は、強み仮説から入ると建設的になります。
モチベーションはエネルギーと意味の二軸で扱います。

強み仮説をつくる

「最近、他者から感謝された場面はどこですか」。
「自分では当たり前だが、周囲が驚く行動は何ですか」。
「5人に聞いたら一致しそうなあなたの資質は何ですか」。
強みは本人が気づきにくいものです。
観察とフィードバックで輪郭を出します。

スキル伸長の設計

「半年後に今より一段深くしたいスキルは何ですか」。
「実務の中で練習機会を毎週30分作るなら、どこに挿し込みますか」。
「メンター、教材、実戦の三点セットで、最初の一歩は何ですか」。
練習計画は日常に埋め込むと続きます。
特別な時間より、業務の流れに小さく足すのがコツです。

エネルギーと負荷管理

「一日のピーク時間はいつですか」。
「今週、気力を吸う作業と満たす作業は何でしたか」。
「負荷を10%下げるなら、何を手放しますか」。
燃え尽きは静かに進みます。
早めの微調整で持久力を確保します。

仕事の意味づけ

「この仕事が社会や顧客に与える変化を一言で言うと何ですか」。
「その実感を得る間隔を短くする方法はありますか」。
「誰の声を聞くとモチベーションが回復しますか」。
意味が見えると、努力が粘りに変わります。
小さな成功体験を意図的に設計します。

成果につながる議事録術と運用ループ

議事録は「記録」ではなく「実行の装置」です。
読めばすぐ動ける一枚を作り、次回につなぎます。

1ページテンプレート

以下の5ブロックを固定します。
タイトル。
今日の目的。
決定事項。
次の一手(Who/What/By When/初手の時間割)。
メモ。
各ブロックは一行で要点だけを書きます。
長文は避け、動詞で始めると行動に移りやすくなります。

例。
今日の目的:見込み客フォローの転換率改善の打ち手を決める。
決定事項:ABテストを来週水曜開始。スクリプト案は私が草案作成。
次の一手:佐藤/ターゲット抽出/8月20日まで/明日10時に30分だけリストを切る。
メモ:懸念は連絡頻度の過多。許容回数を先に示す。

アジェンダと時間配分

30分会議の目安は、チェックイン3分、テーマ深掘り20分、合意7分です。
テーマは一つにします。
多くても二つまでに絞ります。
「今日はこの一つに全振りして良いですか」と冒頭で合意すると迷いが消えます。
途中で脱線したら「議事録のメモに入れて後で扱いましょう」と駐車します。
視線をテンプレに戻すと、さっと軌道修正できます。

合意の言語化テクニック

「誰が」「何を」「いつまでに」を口に出して相互に復唱します。
「初手の時間」を入れると実行率が上がります。
また「支援者」と「障害の早期警戒サイン」を一行で添えます。
例として、「私がレビュー役。水曜昼に10分だけ」。
「反応がゼロなら金曜にプランBへ」などです。
可視化された合意は迷いを減らします。

検索性とタグ付け

議事録のタイトルは「日付_テーマ_相手名」に統一します。
タグは「目標」「障害」「成長」「健康」「決裁」など5〜7個に固定します。
将来の検索性が大幅に上がります。
同じタグの議事録だけを一覧にすると、継続的な変化が見えます。

ツールの使い分け

リアルタイム編集が必要なら共同ドキュメントを使います。
短時間で回すなら、テンプレをテキストで用意し、事前に配布します。
ダッシュボードとリンクして、決定事項の達成状況が自動で反映されるようにします。
通知は週1回にまとめ、ノイズを抑えます。
運用の手間を減らすと、続けやすくなります。

運用ループの整え方

1on1の前日までに、前回の「次の一手」の結果を自己報告してもらいます。
当日はテンプレを開き、冒頭で目的を読み上げます。
会後は5分で議事録を仕上げ、合意部分だけを関係者に共有します。
翌朝、初手の時間に着手できたかを一言で確認します。
この小さなループが回り出すと、成果に向けた微差が積み上がります。

まとめ

1on1を「成果のための共同作業」と定義し、質問と議事録を一本の導線にすると、会議は軽く鋭くなります。
開かれた問いで事実を掴み、スケールで芯を定め、三案で主体性を引き出すのが基本です。
議事録は一枚に絞り、決定事項と次の一手を誰が見ても動ける言葉で残します。
そして、初手の時間を入れて実行率を高め、小さな検証を積み重ねます。
今日の一回を設計できれば、明日の一歩は自然と前に出ます。
まずはテンプレをコピーし、次の1on1で三つの質問だけ試してみてください。
きっと会話が前に転がり、仕事が少し軽く感じられるはずです。

  • この記事を書いた人

Ken

2000年からWEB制作を開始し現在は会社員でWEBクリエイターとして勤務。 デジタルガジェット、WEB技術、投資、ライフハックに興味があり現在複数のブログを運営中

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