仕事・勉強

企画が刺さる「問題→解決→証拠」の提案書フォーマット

会議室で資料を開いた瞬間、読み手の頭の中で「いまの困りごとは何か→どう解くのか→本当に効く根拠はあるのか」という順で評価が進みます。
そこで本稿では、企画が刺さる「問題→解決→証拠」の提案書フォーマットを、テンプレートと具体例つきで解説します。
狙いはシンプルです。
短時間で意思決定者の疑念を減らし、実行合意までを最短で進めることです。
見出し設計、図の使い方、反論への備え、数値の置き方まで、明日から使える実務のコツを一枚に“すっと”収める方法を示します。
読み終えるころには、自分の企画を5分で通す骨格が手元に残るはずです。

なぜ「問題→解決→証拠」なのか

意思決定の順番に沿う

人はまずリスクと痛みを認識し、次に処方箋を受け入れ、最後に納得の裏づけを求めます。
この順番に沿って並べるだけで、読み手の認知負荷が下がり、ページ送りの抵抗が減ります。
同じ内容でも「効果の話から始める」「歴史紹介から始める」構成より、反応率が上がるのは営業現場ではよくある事実です。
とくに多忙な役員は1ページ目で続きの可否を決めるため、導入の秩序が成果を分けます。

反論に先回りする

反論は主に三つに集約されます。
「それは本当に問題か」「その解決策で足りるか」「根拠は妥当か」です。
順番どおりに答えを並べれば、未記載の余白が減り、想像でマイナス評価される確率が下がります。
逆に順序を崩すと、読み手が補完のためにページを行き来し、集中が“ふっと”切れてしまいます。

迷わない見出し設計

各章のトップ行を「結論→理由→要点3つ」の最短文で書きます。
例として、「現状、◯◯の離脱で売上が月△%減。原因はA・B・C。放置コストは年◯◯万円」です。
見出しだけを追えば全体像が復元できるのが理想です。
社内転送でも要旨が伝わるため、支持者が増えやすくなります。

提案書フォーマット全体像

1ページ版テンプレ

1.表題/日付/担当。
2.問題:現状の数字、影響、放置コスト。
3.解決:打ち手の全体像、仕組み、スコープ外。
4.証拠:実績、比較、テスト結果、第三者の裏づけ。
5.効果予測:KPIの変化レンジ、期間、前提。
6.実行計画:体制、スケジュール、役割。
7.費用とリスク:内訳、回収見込み、想定反論と対策。
8.次アクション:決裁項目、合意事項、開始条件。
各ブロックは1〜3行で、図は最大2点までに抑えます。
読み手が“ぱっと”全景を掴める密度を目指します。

長尺版テンプレ

表紙。
エグゼクティブサマリー(A4半ページ)。
第1章 問題の定義。
第2章 原因分析。
第3章 解決案の選定理由。
第4章 実行計画と体制。
第5章 効果予測と採算。
第6章 証拠(事例・データ・検証)。
第7章 リスクと代替案。
付録(測定方法、用語集、見積)。
章の頭に1段落のサマリーを置き、詳細は箇条書きで圧縮します。
冗長な説明は付録に送り、本文は論点だけを“きゅっと”絞ります。

章立ての分量目安

エグゼクティブサマリーは200〜300字。
問題と原因は合わせて全体の30%。
解決と実行計画は40%。
証拠は20%。
残り10%を費用・リスク・次アクションに配分します。
これで読み手の知りたい順に紙面が割り振られます。

「問題」を描く技術

現状の把握と“事実の山”

意見より前に、誰もが合意できる観測事実を積み上げます。
例:「直近3か月の問い合わせは前年比−18%」「CVの約6割がスマホ経由」「離脱の7割がフォーム2ページ目」です。
時系列・構成比・比較対象(昨年同時期、業界中央値)の三点で示すと、状況が立体的に伝わります。
数は3〜5点に限定し、グラフは折れ線または棒で統一します。
色は黒とアクセント1色のみで、視線を迷わせないようにします。

課題の因果を1枚図に

「事実→解釈→仮説→検証計画」の矢印で、因果を1枚に整理します。
例:「広告流入の質低下→フォーム設計と整合していない→設計の段差が離脱を誘発→ABテストで1ページ化を検証」。
図の中心には最重要KPIを置きます。
主語と動詞を短くし、矢印の向きは右へ統一します。
読み手の目線が“するする”流れる配置が理想です。

取れる選択肢と放置コスト

最低でも三つの選択肢を並べます。
「現状維持」「暫定対応」「抜本策」の比較です。
評価軸は「効果幅」「着手までの時間」「コスト」「失敗時の影響」です。
放置コストは金額か機会損失で示します。
例:「現状維持なら年△△百万円の売上逸失」「暫定対応なら3か月で◯%改善だが再設計コストが二重化」です。
この段で“だから今動くべき”という温度を上げます。

「解決」を設計する

ソリューションの核と代替案

解決策は「何をやめ、何を増やすか」で書き分けます。
例:「2ページ目の任意項目を廃止し、必須項目はプルダウン化」「広告セットBを停止し、Cへ日額を移管」です。
代替案も併記し、採用しなかった理由を一行で添えます。
「代替案は導入が早いが改善幅が小さい」「抜本策は効果が大きいが初期負荷が高い」などのトレードオフを見せます。
読み手の腹落ちを“ぐっと”促すためです。

実行計画と責任分担

WBSは週単位で最大12週のガントにします。
各タスクに「担当」「完了定義(DoD)」「依存関係」を明記します。
例:「フォーム設計Figma改版/UX担当/DoD=ABテストに載せられる状態」「依存=計測タグ更新」。
意思決定が必要な日を赤丸で表示し、会議体の頻度と形式(30分・隔週・オンライン)も書きます。
プロジェクトの“詰まり”を事前に解消します。

費用対効果の試算

計算は単純化し、前提の透明性を優先します。
例のフォーマットを示します。
前提:月間セッション10万、現CVR2.0%、単価3万円、粗利率60%。
施策効果レンジ:CVR+0.3〜0.8pt。
増分粗利=セッション×単価×粗利率×CVR増分。
下限試算=100,000×30,000×0.6×0.003=5,400,000円/月。
上限試算=100,000×30,000×0.6×0.008=14,400,000円/月。
投資回収は初期費用◯◯万円、運用費◯◯万円でブレイクイーブン月数を示します。
「前提が保守的である理由」も一行添えて、期待値の過大評価を避けます。

「証拠」を積み上げる

数字・比較・第三者の声

証拠は三層で用意します。
第一に自社の過去実績、第二に同業他社の公開事例、第三に専門家・ユーザーの証言です。
比較表では「前→後」「他社A→自社案」を同軸で示し、軸は2つまでにします。
引用は出典名と時期だけを明記し、本文は要点に限定します。
声の引用は短く、固有名詞を残して“ぐいっ”と信頼度を上げます。

小さな実験(スモールテスト)

本番導入前に、1〜2週間で検証可能な実験計画を示します。
例:「LPのファーストビュー差し替えABテスト」「フォームの必須項目削減テスト」。
評価指標は主要KPIと副指標を1つずつにし、母数不足のリスクと解釈の限界も明記します。
たとえ効果が小さくても「方向性の一致」を証明できれば、採択の確度が上がります。

反論への備えとFAQ

よくある反論と再説明の例を示します。
反論「予算が厳しい」。
再説明「下限試算でも月540万円の増分粗利、初期◯◯万円は◯週で回収見込み。
小規模テストで効果を確認後に本実装へ段階導入します」。
反論「リソースが足りない」。
再説明「外部委託で初期の山場を越え、2か月目から内製へ移管します」。
反論「リスクが怖い」。
再説明「ロールバック手順を準備し、切替は夜間に30分。
失敗時の影響は限定的です」。
このセクションを“さらり”と添えるだけで心理的障壁が下がります。

仕上げのチェックリストと表現集

読み手視点チェック

1.見出しだけで論旨が追えるか。
2.数字は比較軸と期間がそろっているか。
3.図の主張は1枚1メッセージか。
4.「やらないこと」が明記されているか。
5.次アクションがカレンダーに落ちるか。
6.反論に先回りしているか。
7.用語が社内標準に合わせてあるか。
この7点で“さくっと”最終確認します。

図・表・添付の作法

図は1枚1主張、色は2色、凡例は左上、タイトルは結論形にします。
表は行を最大7、列を最大5にし、差が出るセルだけ強調します。
添付の見積・要件定義は本文と番号を対応させ、迷子を防止します。
ファイル名は「YYYYMMDD_提案名_版数」とし、更新の混乱を抑えます。

そのまま使える文章パターン

問題提示「現状、◯◯が△△のため、売上・コストに□□の影響が出ています」。
放置コスト「この状態が継続すると、年間で少なくとも◯◯円の機会損失が見込まれます」。
解決案「最短で効果を出すにはAを停止しBへ集中、並行でCを再設計します」。
選定理由「本案は効果幅、着手速度、実装の再現性のバランスで最適と判断しました」。
証拠「同条件のテストでCVRが+0.5pt、95%信頼区間で有意でした」。
次アクション「承認いただければ、来週◯日からキックオフ可能です」。
型を“するり”と差し替えて使えます。

業界別ミニ事例

SaaSリード獲得改善

問題「MQLが前年比−22%、フォーム離脱がステップ2で集中」。
解決「1ページ化と必須項目を4→2へ。
広告セットの再配分」。
証拠「2週間のABでCVR+0.6pt、電話フォローの接続率+8%」。
効果予測「月間MQL+120件、パイプライン+◯◯万円」。
実行計画「設計1週、実装1週、テスト2週」。
反論対策「個人情報精度低下→スコアリングで補正」。

採用の歩留まり向上

問題「一次面接の辞退率が35%で、候補者体験の断絶が原因疑い」。
解決「面接前日のSMSリマインドと当日所要時間の短縮」。
証拠「パイロット部署で辞退率−12pt」。
効果予測「採用単価−18%」。
反論対策「コスト増→ATSの既存機能で実装し追加費用ゼロ」。

小売・店舗の回転率

問題「ピーク時のレジ待ち平均7分」。
解決「セルフレジ2台と行列整理のポップ導入」。
証拠「土日2週間で待ち時間−3分、顧客満足度+0.4」。
効果予測「回転数+12%、売上+◯◯万円/月」。
反論対策「高齢層の操作不安→係員1名のアテンド配置」。

業界別ミニ事例(続き)

製造業の歩留まり改善

問題「ライン4の不良率が5.8%で、全体平均の約2倍」。
原因「部品ロットのばらつきと検査工程の遅延」。
解決「部品ロットを仕入れ時点で二次検査、検査工程の画像AI化」。
証拠「試験ラインで不良率−2.1pt、検査時間−30%」。
効果予測「月間廃棄コスト−◯◯万円、生産量+◯%」。
反論対策「初期投資負担→AI部分はリース契約、ROI15か月で回収」。

自治体の窓口混雑解消

問題「市民課の待ち時間が平日午前で平均45分」。
原因「来庁集中と書類不備が半数近く」。
解決「事前予約システムの導入と書類アップロード機能」。
証拠「導入テストで予約率65%、平均待ち時間−18分」。
効果予測「職員残業時間−12%、市民満足度+0.5」。
反論対策「高齢者利用困難→電話予約と来庁時の代行登録を併設」。

まとめ:通る提案は“流れ”で作る

提案が通るか否かは、内容の斬新さよりも「読み手の頭の中の順番に沿っているか」で決まります。
問題で痛みを共有し、解決で処方箋を差し出し、証拠で納得の背中を押す――この流れを崩さなければ、相手の判断は格段に早まります。
さらに、反論への先回りや数字の裏づけを丁寧に置くことで、企画は「検討」から「実行」へと加速します。
次に提案書を作る際は、本稿のフォーマットをそのまま型にして、実際の数値と事例を差し込みながら組み立ててみてください。
きっと、会議室での反応が“くっと”前のめりに変わるはずです。
あなたのアイデアが形になる日を、一日でも早めていきましょう。

  • この記事を書いた人

あすな

WEB制作歴10年。 会社員でWEBクリエイターとして勤務。 デジタルガジェット、WEB技術、投資、ライフハックに興味があり現在複数のブログを運営中

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