「今日の会議、そこで決め切る」ためのアジェンダは、作り方さえ掴めば5分で用意できます。
目的と論点、決め方、時間配分の4点を押さえるだけで、議論はスッと前に進みます。
本記事では、初めてでも迷わない手順、すぐ使える雛形、シーン別の実例までを丁寧にまとめました。
コピーして貼るだけの文章例を多めに用意したので、読み終えた直後から使えます。
準備に時間をかけず、その場で意思決定するための小さなコツも挟みます。
オンラインでも対面でも効く共通ルールに絞っているので、チームの型としても導入しやすいはずです。
「なんとなく集まったけど何も決まらない」を、今日で終わらせましょう。
なぜ“その場で決まる”のかを分解する
ゴールを一行で言語化する
会議の成功は「終わった時に何が手に入っていればOKか」を一行で書けるかにかかっています。
例として「A案かB案のどちらを採用するかを決定する」や「リリース遅延の原因を3つに特定する」など、完了状態が判定できる文にします。
抽象的な言い回しは避け、動詞を「決定する」「特定する」「合意する」に置き換えると軸がカチッと定まります。
ここが書けない会議は、アジェンダが豪華でも空転しがちです。
スコープの線引きを先に出す
「触れないこと」を明示すると、脱線を未然に防げます。
たとえば「本日は価格改定の是非のみを扱い、プロモーション案は扱わない」と書いておきます。
線を引く勇気が、時間を守る最大の節約になります。
言いにくければ「時間の都合で今回はここまで」と柔らかく書くと場がザワつきません。
判断材料と持ち寄り物を明記する
“決める会議”には、根拠が必要です。
事前に「先月のCVR、競合A・Bの価格表、粗利シミュレーション」のように必要資料を列挙します。
資料名は固有名詞で、入手先や担当者も書くと、準備がサッと走り出します。
当日リンクを探す時間は、驚くほど議論を削ります。
時間配分は「論点の数×決め方」で決める
時間は均等割りにせず、論点の難度と意思決定の方式で配分します。
多数決で済む論点は短く、合意形成が必要な論点は長めにするのが基本です。
最後の5分は必ず「決定の言い直し」と「ToDo化」に残します。
締め切りの再確認をアジェンダに書いておくと、クロージングがスムーズに収まります。
5分で作れるアジェンダの基本形
1分で「目的と完了条件」を書く
冒頭に「本日の目的」と「完了条件」を並べます。
例「目的:機能Xのβ公開日を決める。完了条件:公開日と責任者、リスク対策の一次案に合意。」といった具合です。
“誰が見ても同じ解釈になる”粒度まで言葉を磨くのがコツです。
曖昧なら、動詞を具体に置き換えてみましょう。
2分で「現状と制約」をまとめる
一枚に「前提・制約・最新の数値」を箇条書きします。
例「前提:QAは8割完了。制約:広告出稿は今月中のみ可能。数値:先週のエラー率0.8%。」のように短くします。
ここは“議論に出してはいけない”誤解を減らす防波堤です。
長文にせず、名詞と数字でトントンと並べます。
1分で「論点リスト」を作る
論点は“問い”にします。
例「Q1:公開日は7/25と8/1のどちらが妥当か。Q2:判断基準は品質優先か期日優先か。」のように書きます。
問いの形にすると、結論の出口が自然に見えます。
数は3つまでに絞ると密度が上がります。
1分で「決め方と役割」を書く
各論点の決め方を先に宣言します。
例「Q1はPMが最終決定、合意形成を前提に異論は30秒で収集。Q2は基準を3つに定義してスコアで比較。」などです。
進行役、記録係、タイムキーパーを名前で置くと、会議がサクサク動きます。
最後に「本日の成果物」を“文で言い切る”と締まりが出ます。
シーン別サンプルアジェンダ集(コピペOK)
意思決定会議(プロダクトの公開日決定)
目的:機能Xの公開日を決定する。完了条件:公開日、責任者、主要リスク対策一次案に合意。
前提・制約・数値:QA進捗80%。広告は今月のみ。主要バグ3件は修正中。先週の失敗率0.8%。
論点:Q1 公開日は7/25か8/1か。Q2 判断基準は品質優先か期日優先か。Q3 リスク対策の初動は何か。
決め方・役割:Q1はPM最終決定(異論収集30秒)。Q2は基準を「エラー率・CV影響・顧客影響」で3点法。Q3は関係者で3分ブレインストーミング。進行:PM。記録:QA。TK:CS。
時間配分:
・開始3分 目的と完了条件の共有。
・10分 Q1の選択と根拠確認。
・7分 Q2の基準合意とスコアリング。
・5分 Q3の初動合意。
・5分 決定事項の言い直し、担当と期限の明記、次回条件の確認。
成果物:公開日、担当者、対策ToDo(3件)を議事メモに残す。
進捗共有会議(開発スプリントレビュー)
目的:現状の達成度と障害の可視化、次スプリントのフォーカス決定。
前提:バーンダウン、未完了タスク、障害リストを事前配布。
論点:Q1 計画差分の原因は何か。Q2 次スプリントの最重要1項目は何か。
決め方:Q1は事実確認を担当者から60秒ずつ。Q2は優先度基準(価値×緊急度×工数)で合意。
時間配分:
・5分 指標の確認(バーンダウン、欠陥数)。
・8分 差分原因の共有と是正案。
・8分 次スプリントの最重要1項目の選定。
・4分 決定の言い直し、担当と期限。
成果物:優先1項目、阻害要因の除去ToDo、指標の次回目標。
ブレインストーミング(新機能の仮説出し)
目的:ユーザー課題に対する解決案を20個出す。完了条件:実験候補3つを選定。
前提:ペルソナ、課題リスト、既存施策の効果を共有済み。
ルール:批判なし、量を出す、他人の案に乗る、時間厳守。
進め方:
・3分 目的とルール説明。
・10分 サイレントで各自付箋出し(合図はタイマーのピッ)。
・7分 近い案のクラスタリング。
・5分 基準表で上位3案を選定。
成果物:上位3案の検証計画、仮説と期待指標。
1on1(部下の目標設定)
目的:四半期目標の合意と初動タスクの明確化。
前提:前期の振り返りメモを事前共有。
論点:Q1 強みと機会の定義は一致しているか。Q2 目標の数と難易度は適切か。
決め方:SMARTで言い換え、指標と期限を数値で置く。
時間配分:
・5分 前提のすり合わせ。
・10分 目標案の言い換えと指標決定。
・8分 初動タスクと支援の合意。
・4分 次回チェックポイントの設定。
成果物:目標文、KPI、初動3タスク、チェック日程。
迷いが消える「論点」の立て方
誰の何をいつまでに変えたいのかで切る
論点は「対象×行動×期限」で作るとぶれません。
例「既存ユーザーのアップグレード率を今月末までに2%改善する施策はどれか」。
主語が曖昧だと、議論がふわっと漂います。
対象を言い切ると、関係者が自分事として話しやすくなります。
選択肢は“最低3つ+無回答”で用意する
二択は対立を生み、合意形成を固くします。
A、B、Cに「その他(現状維持)」を加えると、心理的な逃げ道ができて本音が出ます。
会議前に選択肢をたたき台として置くと、準備の質がグンと上がります。
当日は選択肢の追加を歓迎する、と添えておきましょう。
判断基準は“最大3つ”まで明文化する
基準が多いと、議論は散ります。
価値、コスト、リスクなど最大3つに絞り、重み付けは「強・中・弱」の三段で十分です。
粒度を揃えるため、各基準に一行の定義を付けます。
基準表は会議の“ものさし”として効きます。
先送りの条件をあらかじめ書く
決めない勇気もアジェンダの一部です。
「資料X未到着ならQ1は保留」「関係者Y不在なら仮決定」など、保留条件を明記します。
こうしておくと、当日の判断がトントンと進みます。
保留時は「次アクションと期日」を必ずセットで残します。
時間が溶けない進行テクニック
開始3分の“型”を固定する
冒頭の3分で、目的、完了条件、時間配分、決め方、役割を読み上げます。
このルーティンだけで空気がピリッと締まります。
口頭だけでなく、画面共有でアジェンダ本文を見せると理解速度が上がります。
ここで「今日のゴールは一行で言えます」と宣言すると、迷いが減ります。
タイムボックスは“短く区切って繰り返す”
15分の議題なら「7分議論→1分沈黙→5分まとめ→2分決定」で刻みます。
沈黙の1分は、発言偏りをリセットする効果が高いです。
アラームの音は小さめにして、終了合図はチャットの絵文字で十分です。
人は区切りが見えると、集中がスッと戻ります。
“鳩時計法”で脱線を戻す
脱線したら、進行役が「今は本線から3分外れています。戻します」と時刻と距離で宣言します。
責めない表現にすると、場が冷えません。
アジェンダに「脱線は鳩時計法で戻す」と一文入れるだけで効きます。
合図が決まっていると、参加者も安心します。
決定の言い直しと“誰がいつまで”
決まったことは、進行役が「結論・理由・担当・期限」の順に言い直します。
議事メモにも同じ順序で残します。
決定の二度言いはくどく感じますが、実は最短の確認方法です。
声に出すと、曖昧さがシュッと削れます。
オンライン会議の工夫と失敗リカバリー
画面共有は「見るもの一枚だけ」に絞る
オンラインでは「どの画面を見て話しているか」で迷子が発生します。
会議の最初にアジェンダ一枚を共有し、以降も基本はその一枚に戻る運用にします。
必要資料はリンクで埋め込み、開いたらすぐ戻るを徹底します。
ズームは120〜150%にして見出しを太字、ポインタをゆっくり動かすと視線がそろいます。
「今はQ2のこの行にいます」と口に出すだけで、遅れて参加した人もスッと追いつけます。
発言順は“静→動”のラウンドロビン
声の大きい人から当てると、空気が固まります。
最初は情報に近いが発言は控えめな人から順に、30〜60秒で持ち時間を回すのがコツです。
一周したら反論・補足の二周目に移ると、議論が偏りません。
迷ったら「上流担当→実装→運用→顧客接点→意思決定者」の順で回すと自然に深まります。
タイムキーパーは合図をチャットの絵文字で出すと、雰囲気が柔らかく保てます。
チャットは事実置き場、声は意思決定
発言で数字を読み上げる時間はもったいないです。
数値やリンク、スクリーンショットはチャットに投下し、口頭は「何を決めるか」に集中します。
同時に「Yes/No/保留」のリアクションを決めておくと、賛否の温度が一目で分かります。
議事メモの更新ログもチャットに流すと、記録の抜けが減ります。
「事実は文字、解釈は声」と切り分けると、テンポがカチッと整います。
ラグとノイズの“見えない敵”対策
オンラインは0.5〜1秒の遅延で会話が噛み合いません。
発言前に名前を呼び、話し終わりは「以上です」で明確に区切ります。
ノイズ抑制のため、基本はミュート、手を挙げるかチャットで挙手を宣言します。
回線不調者には「要点を二文で」とお願いし、補足はチャットに任せます。
録画する際は目的を冒頭で伝え、閲覧対象と保存期間を一言添えると安心感が出ます。
失敗あるあるの即応マニュアル
議題が散って戻れない場合は、5分でミニ再編を実施します。
アジェンダのQを二つに絞り、残りは保留条件に沿って次回送りにします。
声が強い人に引っ張られる時は、判断基準を画面に再表示し「基準のどれに当たるか」で話を戻します。
決まったのに動かない時は「誰が・いつ・何を・どの形式で終わりとするか」を言い直し、ToDoの粒度を「30分で着手できる大きさ」に下げます。
参加者の遅刻が重なる場合は、5分で入室を締めて観覧モードに切り替える運用を宣言します。
資料が来ない時は「資料名・出所・提出期限・不在時の仮決定」をアジェンダに固定文で入れておきます。
ハイブリッドの“距離バイアス”を抑える
会議室とオンラインが混在すると、現地の私語や表情が有利になります。
必ず全員が同じ画面を見る状態を作り、会議室の人も各自PCでチャットを開きます。
発言は現地→リモート→現地→リモートの交互で回すと公平です。
ホワイトボードは写真を撮って終わりにせず、同時にオンラインボードへ転記します。
書記を二人体制にして、現地の板書係とオンラインのテキスト係を分けると抜け漏れが減ります。
便利フレーズ集(コピペOK)
冒頭で空気を整える一言
「本日の目的は一行で『◯◯を決める』です。完了条件は△△の合意です。」
「時間配分はこの通りです。ずれたら鳩時計法で戻します。」
「本日は価格の是非のみ扱います。プロモーションは扱いません。」
「判断基準は価値・コスト・リスクの三点でいきます。」
脱線をやさしく戻す言い方
「今は本線から2分外れています。Q2に戻しますね。」
「大事な話ですが、今日は範囲外です。保留欄に記載して次回に回します。」
「その論点は“リスク対策”に整理できそうです。いったん基準表に沿って見直しましょう。」
異論・懸念を短時間で集める型
「異論・懸念を30秒でお願いします。事実はチャット、結論は声で。」
「“強い反対”のみ挙手をお願いします。理由は一言で。」
「賛成多数ですが、反対の根拠を一つだけ確認させてください。」
合意と仮決定の言い回し
「結論はA案採用です。理由は基準の価値が最も高いからです。」
「資料Xが未到着のため、仮決定としてB案で進めます。到着次第、非同期で再判定します。」
「今回は『期限優先』で合意しました。品質面の補助線としてモニタリングを強化します。」
クロージングとToDo化
「担当は佐藤さん、期限は8月20日、完了条件は“リリースノート公開”です。」
「次回会議の開催条件は“障害件数が週次で3件以下”になった時点です。」
「決定事項をチャットに貼りました。異論がなければこれで締めます。」
チャット定型(オンライン向け)
「【資料】競合価格表はこちら。主要差分はC列をご覧ください。」
「【記録】Q1の結論:A案採用。理由:価値とリスクの総合で上回る。」
「【保留】ユーザー調査の結果待ち。期限:8月15日。担当:高橋さん。」
「【投票】Q2の基準に賛成の方は👍、修正提案は📝でお願いします。」
そのまま使える“10分意思決定”ミニテンプレ
「目的:◯◯の是非を決める。完了条件:決定・担当・期限の合意。」
「前提:直近指標は××。制約:予算上限△△。」
「論点:Q1 選択肢A/B/C、Q2 判断基準の重みづけ。」
「決め方:一周30秒で異論収集→基準でスコア→進行が結論案→最終決定者が承認。」
「時間:1分目的→5分議論→2分合意→2分ToDo化。」
「成果物:結論、理由、担当、期限、保留条件。」
1on1や面談で効く言い換え
「目標をSMARTに一度言い換えてみましょう。」
「強みの事実例を二つください。私からも一つ補足します。」
「初動タスクは“30分で手をつけられる大きさ”に砕きましょう。」
反対意見を歓迎する雰囲気づくり
「少数意見を先にうかがいます。安全に話せるよう30秒だけ時間をください。」
「今日は“試しに言う”文化でいきます。荒削り歓迎です。」
「否定ではなく“別の基準だとどう見えるか”で語ってください。」
まとめ
会議で「その場で決める」ための鍵は、目的と完了条件を一行で言い切り、論点を問いで並べ、決め方と時間配分を先に宣言することです。
とはいえ現場では脱線や同調圧力、準備不足が起きます。
そこで鳩時計法やラウンドロビン、チャット分離を組み合わせ、保留条件と仮決定の運用を標準化しましょう。
まずは本記事のミニテンプレをコピーして、次の会議の冒頭3分で読み上げてください。
きっと議論の輪郭がくっきりし、合意がスッと生まれます。
小さな成功を積み重ね、チームの“決める力”を日常の当たり前に変えていきましょう。