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【転職】デザイナー転職のポートフォリオ改善チェックリスト【ライフハック】

転職の場面で、ポートフォリオは履歴書よりも早く目に触れ、合否の初動を決める“表情”です。採用担当は1日に数十件をサッと流し見し、興味を持ったものだけを深掘りします。だからこそ、作品の良し悪し以前に「最初の3秒で読み進めたい」と感じさせる設計が必要です。本稿では、デザイナー転職の現場で実際に評価されやすい作り方を、チェックリスト形式で具体化しました。Web/UI、グラフィック、モーション、リサーチなど職種別の見せ方から、1プロジェクトの“必要十分”な記述テンプレ、ファイル形式や送付オペレーションまで網羅します。読み終えた直後に、そのまま自分のポートフォリオへ手を入れられる粒度でまとめていますので、今日の応募や来週の面接に直結する改善が可能です。

採用担当が見る「3秒」と「30秒」を意識する

ファーストビューの設計(表紙・サマリー)

最初の3秒で判断されるのは「雰囲気と対象職種が合っているか」です。表紙はA4横(16:9でも可)で、氏名/ロール(例:Product Designer)/連絡先/最新更新日だけに絞り、背景は無彩色〜低彩度でコントラストを確保します。2枚目に「サマリー」を置き、得意領域(UI設計・情報設計・ビジュアル)と代表作3件のサムネイルを並べ、各サムネには“問題→成果”を10〜15字で添えると先読みの負担が減ります。PDFなら1ファイル15MB以下を目安、オンライン版は目次とパンくずを用意し、1クリックで代表作へ到達できる導線を作ります。

プロジェクトの並び順とストーリー

30秒の時点で見られるのは「一番いい仕事の筋が通っているか」。並び順は最新×成果が大きい順が基本ですが、応募先の文脈に合わせて“相手が知りたい順”に差し替えます。たとえばSaaS企業ならオンボーディング改善や有料転換率改善の案件を先頭へ。ECならCVRや購買単価が動いた案件を最初に。複数の良案件があるなら、①大きな成果(数値)②難条件の克服(制約)③チームでの役割が明確、の三点で優先順位を決めると失敗しにくいです。

非言語情報(余白・書体・密度)の評価

作品以前に「読みやすいか」は強い示唆になります。タイトルと本文のサイズ比は1:1.6〜1.8、行間は本文で1.4〜1.6倍、左右マージンは本文幅の8〜12%が目安。本文は可読性重視のサンセリフ1種+強調用1種で十分です。図版は“1スライド1メッセージ”を守り、色はベース+アクセント1色(UIならアクセントは主要CTA色に合わせる)に絞ると密度過多を避けられます。これらは「設計・情報整理の素養」を間接的に伝える非言語の評価軸です。

職種別・目的別の見せ方を切り替える

Web/UIデザイナー向け(プロセス重視)

UI/UX系はプロセスの透明性が命です。ウォークスルーの順序は、課題仮説→ユーザー/市場のインサイト→情報設計→ワイヤー→UIデザイン→検証→結果。特に「意思決定の分岐点」を1〜2箇所、図解で示します(例:CTA配置A/Bと注視ヒートマップ、KPI影響の比較)。完成画だけでなく、中間成果物(サイトマップ、フロー、コンポーネント定義)を掲載すると、再現性を評価してもらえます。

グラフィック/ブランディング(仕上がり重視)

ビジュアルのクオリティが主戦場です。アートボードの整頓、色校や用紙選定、ロゴの最小使用サイズや余白規定など、運用に耐える設計も併記します。モックアップは乱用せず、実配布や実装写真を優先。色は実印刷/現物に近い写真を撮影し、環境光が整った状態で掲載します。ブランドの“らしさ”を一言で説明できるタグラインを各案件に添えると、記憶に残りやすくなります。

モーション/3D/UXリサーチ(専門性の証明)

モーションは再生時間10〜30秒の短編をサムネイル化し、動きの原則(イージング、オーバーシュート、タイミング)を説明。3Dはトポロジやマテリアル設定、レンダリング条件を1枚にまとめ、“見た目の裏側”を見せます。リサーチは計画→対象→サンプル数→手法→主な発見→ビジネス示唆の順で簡潔に。統計的に弱い場合は限界と補完策(トライアンギュレーション)を書き添えると誠実さが伝わります。

未経験・異業種からの転職(換骨奪胎)

実務が少ない場合は“業務に近い演習”で埋めます。既存アプリのオンボーディング再設計、LPの情報設計リライト、ブランドガイドの再構成など、評価者が文脈を共有しやすい題材を選ぶと効果的です。元職の強み(分析、営業、CSなど)を“ユーザー理解”や“業務知”に結びつけて可視化し、学習のロードマップ(3か月でこれを学び実践)を最後に提示すると伸びしろが伝わります。

プロジェクト1件あたりの「必要十分」テンプレート

背景・課題・制約を90秒で

案件の背景は「誰の、どんな行動や成果を変えたかったか」に集約します。ターゲット、KPI、期日、予算、規制や既存システムなどの制約を1スライドで。理想は箇条書き5行以内。長い調査は別ページに逃し、ここでは“意思決定の前提”だけを残します。制約を書けると現実解を設計できる人だと伝わります。

プロセス・意思決定の証跡

プロセス紹介は“見た目の栄養価”より“判断の筋道”を優先。ワイヤーの比較、バリエーションの弔い(採用しなかった案)、その理由(技術・費用・UX)を添えます。ユーザビリティテストは参加者属性、タスク、主要発見3点を図解。デザイン原則(例:一貫性、可視性、エラー防止)をどの画面にどう反映したか、吹き出しで示すと納得感が増します。

成果・数値・学びの書き方

成果はKPIの定義→ベースライン→施策→結果→解釈の順。例:「アカウント作成完了率 42%→58%(+16pt、n=3.1万)/計測期間:2024/10–2025/01」。細部の定量化が難しい場合は、代替指標(タスク完了時間、エラー率、NPS、CSからの問い合わせ件数)で示します。失敗は隠さず、次の改善案を添えると前向きな評価に変わります。

役割とチーム体制の開示

「自分が何をやったか」は最重要。RACIや簡易表で、要件定義、情報設計、UI、原稿、実装、分析の担当範囲を明確に。週次の関与時間や関係部門(PdM、エンジニア、CS、法務)も書くと、組織内連携のイメージが湧きます。外注やテンプレ利用がある場合は出典を明記して信頼を担保します。

採点されるチェック項目リスト(セルフチェック)

伝わるか(メッセージの明確さ)

・各スライドに「今日、伝えたい一言」があるか。
・図と文が冗長になっていないか(どちらかを削れるか)。
・用語が応募先の業界語に一致しているか(例:MAUかWAUか)。
・色や注釈で視線誘導ができているか(左上→右下の自然な流れ)。

使えるか(再現性・即戦力の兆し)

・設計思想や原則が言語化されているか。
・実装や運用の制約に触れているか(パフォーマンス、アクセシビリティ)。
・データやテストの手順が簡潔に示されているか。
・ドキュメントの目次/リンク構造が合理的か。

信頼できるか(誠実さ・整合性)

・成果の数値に計測期間、母数、出所があるか。
・NDA配慮が適切か(匿名化、数値のレンジ化)。
・出典・テンプレート・素材のクレジットを明記しているか。
・誇張表現や“持っていない権限”の表記がないか。

一貫しているか(トーン&マナー)

・タイプスケール、余白、グリッドが全ページで整っているか。
・色数とアイコンスタイルが統一されているか。
・文章の語尾や敬体が揺れていないか。
・サムネイルが作品ごとに同解像度・同アスペクト比か。

作品の「質」を底上げする即効テク

色・余白・タイポの三点直し

まず全体の色数を3色以内に制限します(ベース/テキスト/アクセント)。余白は「詰めすぎ→読みづらい」を避け、段落間12〜20px、要素間8px刻みでリズムを作ると即改善。タイポは見出し・本文・注釈の3レベルをつくり、太さは1段階だけ上げる(Regular→Mediumなど)。これだけで素地が整い、他の粗が目立ちにくくなります。

画面密度と階層の調律

“情報の重さ”に応じて階層を3段に分けます。主要メッセージ>補助説明>注釈。強調は同時に2か所まで。視線が迷う場合は、①見出しの一行化、②箇条書き3点まで、③図のラベルの冗長削減、の順でダイエット。にぎやかなUIはスクロールで分割し、各セクション頭に要点を短文で置くと、読了率が上がります。

モバイル・アクセシビリティ対応

オンライン版はモバイルからも見られます。本文16px以上、タップ領域は44px角以上を基準に。コントラスト比は4.5:1以上、代替テキストは代表画像だけでも付与。動画は自動再生を避け、字幕かキャプションを用意します。これらは「ユーザーへの配慮」を作品そのもので証明する機会です。

実在感の出し方(ダミーテキストやモック)

Lorem ipsumは最小限に。実際の文体・桁・制約に近いテキストへ置換します(例:住所・氏名の桁、金額の桁、日付フォーマット)。モバイルUIは親指リーチや片手操作の写真を載せると、使い勝手の想像がつきます。印刷物は紙厚や加工(箔、エンボス)の寄り写真を1枚入れると、仕上がりの説得力が跳ね上がります。

ドキュメント形式の選び方(PDF/Notion/ウェブ)

PDFで出すときのベストプラクティス

PDFは“受け取り側の環境差”を最小化できます。A4横 or 16:9、10〜20枚、15MB以下を上限に。目次ページに各案件の内部リンクを付け、代表作には外部プロトのURLも併記。画像は150〜200dpiで十分、細部説明は拡大図を別ページ化します。更新日は表紙右上、バージョン表記はv1.2のように小さく置くと運用が楽です。

Notionや自前ウェブの使いどころ

“回遊して深掘りしてほしい”ときはNotionやウェブが有利です。1画面1目的で短文+図を徹底し、目次・パンくず・タグで横断探索を補助。英語版ページを薄く用意しておくと外資や多国籍チームの評価が上がります。モバイル幅での可読性、ダークモード対応、読み込み速度もチェックしましょう。

Figmaやプロトの扱い

操作して理解が進む案件はFigmaリンクを添えます。閲覧権限は“view only”、説明レイヤーはコメントではなくガイド面に集約。フレーム名は「課題_施策_結果」の順にし、プロト開始点は“最初に伝えたい画面”へ。重いアセットはページ分割で負担を下げます。

NDA・実名・数値のマスキング

匿名化の基本ルール

会社名・固有名詞はイニシャル化、ロゴはグレーアウト。数値はレンジ(例:+12〜18pt)や比率で表現し、期間と母数は残すと信頼は維持されます。スクショは識別情報を消し、使用データは公開情報か自作ダミーへ差し替えます。迷ったら“再現可能だが特定不能”を判断基準に。

画像・UIの再現と代替

実画面を使えない場合、構造だけを残したワイヤー図に置換します。統計図は値をダミーに変えつつ傾向は同等に。実名の消し忘れ対策として、提出前に“検索:@・#・http・社名キーワード”で全ページを機械的に点検すると抜け漏れが減ります。

合意と境界線の明確化

在籍企業の製作物を使うなら、社内規程の範囲を確認し、必要に応じて「個人ポートフォリオでの非商用公開」をメールで記録化。外部公開が難しい場合は、面接時のみ提示の“限定公開URL+パスワード”運用に切り替えます。

提出オペレーションを整える

ファイル命名とバージョン管理

「Name_Portfolio_ProductDesigner_2025Q3_v1.2.pdf」のように、人名・ロール・期・版を含めます。差し替え時は同名上書きではなくv番号で履歴を残し、応募先には“最新版URL”を使って更新を一元化。ローカルとクラウドのディレクトリ構造も案件別に揃えます。

送付文テンプレ(コピーして即使用)

件名:[応募]プロダクトデザイナー/氏名
本文:
いつもお世話になっております。◯◯(氏名)です。貴社◯◯職に応募いたします。直近の成果が伝わる3案件を先頭に再構成しました。PDFとオンライン版を併記します。ご多忙の折恐縮ですが、ご査収ください。
・PDF:添付(15MB)
・オンライン(PW: 1234):https://…
面接等の機会を頂けましたら、10分の案件解説をご用意します。どうぞよろしくお願いいたします。

応募フォーム/エージェント対策

フォームは“1ファイルのみ”の制限が多いため、短縮版PDF(代表作3件)とフル版のURLを併記。エージェントには案件マッピング表(応募先→該当案件リンク)を渡すと推薦文が強化されます。URLはUTM付きにして、どの経路から閲覧されたかを把握できるようにします。

面接での見せ方と話し方

10分版ピッチの構成

冒頭30秒で自己紹介と得意領域→3分で代表作A(課題/制約/意思決定)→3分で代表作B(数値と学び)→2分で失敗からの改善→最後に志望先の課題仮説1つ。各セクションの冒頭に“一言結論”を置き、資料は1スライド1メッセージ。タイムキーパー用にスマホの秒針を視界外へ置きます。

画面共有の事前準備

ウィンドウは最小限、通知は切る、解像度は相手側のHD基準に合わせて125%拡大。ネット回線は有線 or テザリングのバックアップを確保。サムネイルを大きくしておくと、流し見でもメッセージが残ります。質問が来たら“関連スライド番号”を即呼び出せるよう目次に番号を振っておきます。

想定問答の型

「あなたの強みは?」→“再現性の根拠+短い事例”。
「なぜその意思決定?」→“比較した選択肢・評価軸・捨てた理由”。
「数字はどこから?」→“計測方法・期間・母数”。
“型”で答えるとブレません。反対に、言い切れない部分は“前提条件つきの結論”として誠実に提示します。

7日間の改善スプリント

Day1–2:棚卸しと骨組み

案件を“成果/制約/役割の明確さ”で仕分け、トップ3を決定。各案件に一言タグラインを作り、章立てを白紙に書き出します。余分な図版は一旦捨て、“意思決定の証跡”に再投資。

Day3–4:文章・図解の磨き込み

本文は結論→根拠→示唆の順に短文化。図は余白を増やし、注釈は10〜14字で。見出しの語尾を名詞止めに揃えると、一覧性が上がります。色数・書体・行長をテンプレ化して全体の一貫性を出します。

Day5:検証とアクセシビリティ

モバイル閲覧・ダークモード・コントラストを点検。音声読み上げで不自然な文や記号の連打を発見できます。外部の友人1人に“30秒レビュー”を依頼し、最初に伝わった点/伝わらなかった点だけを回収します。

Day6–7:仕上げと提出

表紙・サマリー・代表作の順で“導線”を最終確認。PDF出力/URL作成/パスワード設定までをチェックリストで完了させ、そのまま応募。送付後24時間で“閲覧ログ→次の一手”を決めて追伸を送ります。

よくあるNGと回避策

非現実的な数値の提示

桁が大きすぎる改善(例:CVR10倍)は懐疑の目で見られます。期間・母数・ベースラインを必ず併記し、相対改善ではなく“母集団に対する実数”も補助提示すると誤解を防げます。

誇張と関与不明

“自分ごと”の範囲が曖昧だと信用を落とします。RACIや担当区分を小さな表で表示し、外部の力を借りた箇所はクレジットで明示。迷ったら“自分がいなくても他者で再現できる説明か”で見直します。

画像・素材の権利

モックに使った写真・アイコンのライセンスを明記。生成AI画像は出力の出典とプロンプト要約を記録し、商用可否も併記。権利がグレーな素材は差し替えを優先します。

リンク切れと閲覧不可

URLの期限・権限・パスワードの有無を提出直前に別端末で検証。もし切れても、PDF単体で最低限伝わる構成にして“フェイルセーフ”を持たせましょう。

計測と学習の仕組み化

UTMと閲覧ログ

オンライン版にはUTMを付与し、チャネル別の閲覧状況を把握。リンク短縮を使う場合も、原URLを手元に管理します。ログは“閲覧→面談→内定”の漏斗でメモ化し、次の応募へ学びを循環させます。

サムネイルとタイトルのA/B

代表作のサムネイルは2案用意し、クリック率の高い方を採用。タイトルは“課題×成果”の二項で短く(例:オンボ改善で完了率+16pt)。効果が見えたら他案件にも展開します。

面接後のふりかえり

質問内容・詰まった点・次回の補強策を面談直後に3行で記録。次の会社に合わせ、該当箇所の説明スライドを1枚だけ差し替える“差分運用”にします。

最後に使える最終チェックリスト

必須チェック

・表紙に氏名/ロール/連絡先/更新日
・代表作3件の“問題→成果”がサムネで伝わる
・各案件に役割・制約・KPI・期間・母数
・NDA配慮の匿名化/数値のレンジ化
・PDF15MB以下+オンライン版URL(PW)
・リンクの権限・期限・モバイル可読性

オプション強化策

・英語ミニ版/ライトテーマ・ダークテーマ
・10分ピッチ資料/想定問答メモ
・UTM計測とサムネA/B
・失敗案件1本の“学び可視化”
・応募先ごとの案件並び替え

まとめ

ポートフォリオは“作品集”ではなく、“意思決定の再現装置”です。課題・制約・判断・結果が一続きで読めれば、未経験の領域でも即戦力の像が立ち上がります。まずは代表作3件の順序を入れ替え、サマリーと役割表を整え、数値の前提を明記しましょう。PDFとオンラインの二段構えにして、10分ピッチを用意すれば、明日の面接でも迷いません。完璧を待つ必要はありません。今日30分、1つの案件だけでも“意思決定の証跡”を足してみてください。あなたの次のチャンスは、その一枚で動きます。

  • この記事を書いた人

あすな

WEB制作歴10年。 会社員でWEBクリエイターとして勤務。 デジタルガジェット、WEB技術、投資、ライフハックに興味があり現在複数のブログを運営中

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