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【副業】契約トラブルを防ぐ基本条項:成果物・納期・著作権【ライフハック】

副業の受注は、ちょっとした言い回しの違いが後の大きな誤解につながります。とくに「成果物」「納期」「著作権」は、最初に線を引いておかないと後戻りが難しい領域です。本稿では、明日からそのまま使える条文の言い回しや、交渉メールの型、チェックリストまで具体的にまとめました。読み終えたら、依頼が来たときに迷わず返せる“自分仕様の雛形”が一式整います。チャットの勢いで話が進みがちな今だからこそ、冷静に土台を固めてトラブルを未然に「止める」技を身につけましょう。あの冷や汗の瞬間を思い出さないために、ドキッとする前に準備です。

副業の契約は「三つの柱」で守る

なぜ成果物・納期・著作権なのか

副業の契約で揉める多くの場面は、実はこの三点に集約されます。成果物が曖昧だと修正無限地獄に陥り、納期が緩いと確認待ちで時間が溶け、著作権が抜けていると納品後に使い方でもめます。先に「何を」「いつまでに」「誰がどう使えるか」を決めると、他の条項(報酬、守秘、再委託、検収など)も整合がとりやすくなります。本稿は法的助言ではなく、実務での転びやすい石を避けるための実践ガイドです。

ひな形より「自分仕様」にする意義

ネットのテンプレは便利ですが、業種(ライティング、デザイン、プログラム、動画)や受注形態(出来高、準委任、月額)で調整点が変わります。テンプレは骨組みに留め、用語を自分の案件に合わせて差し替えるのがコツです。例えば成果物の「完成」の定義は、記事なら「CMSに下書き投稿し校了」、アプリなら「Gitのメインブランチにマージしテストを通過」など具体化します。

チャット文化に合わせたルール化

SlackやLINEでの発注が増えるほど、証跡と版管理が重要です。合意の要点はチャットでも構いませんが、必ず最後に「合意メモ」を一枚に集約し、双方が確認できる場所(Googleドライブ、Notion等)に保管してリンクを共有します。後述のテンプレをコピペして使えば、スピードを落とさずにリスクを下げられます。

成果物をめぐる条項の書き方

仕様・範囲・除外の三点セットで「砂場」を囲う

「何を作るか」は、仕様(できること)・範囲(含む作業)・除外(やらないこと)を並べると漏れが減ります。
記述例:
・仕様:LP1ページ、セクション8、レスポンシブ対応、計測タグ実装(GA4)
・範囲:ワイヤー、デザイン1案、実装、公開作業、計測確認
・除外:撮影、コピーライティング、サーバー移行、A/Bテスト設計
「除外」を書くと、あとから湧く“ついで作業”をやんわり止められます。

変更管理と追加費用のルールを先に

途中変更は起こる前提で扱います。
条文例:
「合意済み仕様の変更・追加は、影響見積もり(費用・納期)を提示し、書面(メール・チャット記録を含む)合意後に着手する。」
この一行があるだけで、“とりあえず進めておいて”の圧力を受けにくくなります。変更見積もりは「工数×時間単価」または「固定追加額」のどちらかに統一し、迷いを減らしましょう。

検収・引き渡し・不具合対応の線引き

検収は「いつ完了したとみなすか」が要点です。
条文例:
「納品後7日以内に書面による指摘がない場合、検収完了とみなす。不具合(仕様不適合)は無償で是正するが、要件変更は有償とする。」
“無償対応”の対象を「不具合」に限定し、「方向性変更」は別枠に。引き渡し形式(ファイル、リポジトリ、CMS)も明記します。

データ取り扱いと守秘

素材データやテスト環境の権限は、利用目的・期間・範囲を限定します。
例:「提供された素材は本件目的のみに使用し、納品・検収後は30日以内に削除する。」

納期を守るための現実的な取り決め

マイルストーンとレビュー日程を先に置く

「最終納期」だけでは遅延に気づけません。要点は“レビュー日を固定化”すること。
例:
・キックオフ:8/25 10:00(60分)
・ワイヤー提出:8/29 終日、承認期限:8/30 12:00
・初稿提出:9/2 18:00、レビュー:9/3 10:00
・最終納品:9/5 18:00
このように承認期限まで書くと、相手側の遅れも見える化できます。

遅延の責任分岐を条文化

情報提供や確認が遅れた場合の扱いを分けます。
条文例:
「発注者の情報提供・承認が期日を超過した場合、納期は当該遅延日数分を自動延長する。」
これで“こちらの遅延”と“相手の遅延”を整理できます。逆に自分起因の遅延が見えたら、代替案(スコープ縮小、暫定版納品)を選べるようにします。

納品形式・タイムゾーン・連絡SLA

納品は「どこへ」「どの拡張子で」「命名規則は」を決めておきます。タイムゾーンも忘れずに。相手が海外のときは「日本時間(JST、UTC+9)」で統一。
連絡SLA例:
「チャットは1営業日以内に一次返信。緊急は電話。土日祝は休止。」
返信速度は信頼に直結します。守れる範囲で短めに設定し、オーバーしたらすぐ理由を共有します。

バッファと「凍結期間」

最終納品前48時間は仕様凍結とし、緊急変更のみ対応する、と決めます。凍結期間があると、最終日の「差し替え地獄」を防げます。バッファは全体の20%を目安に、最初から組み込みましょう。

著作権・知的財産の基本と条文例

帰属の選択肢を理解する

選択肢は大きく三つです。
・譲渡:権利を全て発注者へ移す(対価は高めに)。
・ライセンス:自分に権利を残し、利用を許諾(期間・地域・媒体を限定できる)。
・共同著作:双方が著作権者。実務では管理が複雑になりがち。
“何が最適か”は成果物と予算で変わります。安価な案件は「非独占ライセンス+拡張で独占可」など段階設計が現実的です。

二次利用・改変・再配布の線引き

ポートフォリオ掲載やSNS公開の可否は、必ず独立条項に。
条文例:
「制作者は成果物の画像・実績紹介をポートフォリオとして公開できる。ただし機密情報は除く。公開時は発注者の事前承認を得る。」
改変・再配布の可否は、「元データ(.fig, .psd, ソース)の提供有無」とセットで合意します。

第三者素材・生成AIの扱い

フォント、写真、プラグイン、生成AIのプロンプト等、出自を明記し、利用範囲を適法に。
条文例:
「第三者素材のライセンス条件を遵守し、成果物に組み込む場合はライセンス名と取得元を記録・共有する。生成AIを使用した場合は、その範囲と出力の検証方法を納品時に開示する。」
素材の再配布禁止に触れないよう、納品物と“素材そのもの”の扱いは分けて書きます。

権利侵害時の対応と補償の幅

保証条項は“無制限”にしないのが鉄則です。
条文例:
「制作者は故意または重大な過失による侵害に限り、直接かつ通常の損害を賠償する。上限は本件報酬額を超えない。」
過度なリスクは単価に跳ね返ります。リスクと報酬の釣り合いを説明し、上限を設定しましょう。

トラブル事例から学ぶチェックリスト

よくある誤解と対処

・「修正無制限ですよね?」→「不具合は無償。方向性変更は見積りします。」と即答できる文面を準備。
・「完成の定義って?」→検収基準を示す。例:テスト済み、指定ブラウザで表示崩れなし、など。
・「原稿の権利は?」→譲渡/ライセンスを選択式で提案し、金額差も添える。

チャット発注の落とし穴

スタンプで合意した気分になる問題。重要な決定事項は、その日のうちに「合意メモ」を残し、「本日の確定事項:仕様A、納期B、金額C」とまとめます。決定履歴が一本化されるだけで、後日の“言った言わない”が激減します。

テンプレを自分仕様に直すコツ

・名詞を具体名に置換(“成果物”→“LP1ページ”)。
・数値を入れる(“即時”→“1営業日以内”)。
・裁量語を避ける(“可能な限り”→「再見積りのうえ対応」)。
・例外窓を残す(“原則”+“ただし書き”)。

契約前ヒアリングの質問集

・目的とKPIは?(例:CV+20%)
・優先順位は?(スピード/品質/コスト)
・承認者は誰?(決裁の段数)
・素材の出所と権利関係はクリア?
・公開後の保守は必要?(範囲と料金)

すぐ使える条文テンプレート集

成果物定義のテンプレ

「本件成果物は、[媒体/形式]における[具体内容]とし、仕様は別紙仕様書(チャット記録を含む)に従う。範囲は[含む作業]、除外は[含まない作業]とする。」

納期・検収のテンプレ

「納期は[日付/時刻/タイムゾーン]とし、マイルストーンは[一覧]のとおり。納品後[日数]日以内に書面による指摘がない場合、検収完了とみなす。発注者の承認遅延が生じた場合、納期は当該遅延日数分延長される。」

著作権・利用許諾のテンプレ

「成果物の著作権は[譲渡/非独占ライセンス/独占ライセンス]とする。許諾範囲は[媒体/地域/期間/改変可否]。制作者は実績として一部画像をポートフォリオに掲載できる(機密除く)。第三者素材の権利表記は別紙に記載する。」

修正回数・追加費用のテンプレ

「修正は[回数/範囲]を上限とし、仕様変更・追加は影響見積り(費用・納期)の合意後に着手する。無償対応は仕様不適合の是正に限る。」

交渉メールのフレーズ集

角を立てない修正費用の提案

「方向性の変更を反映する場合、当初想定と作業量が変わるため、追加見積りをご提案させてください。影響範囲を簡単に整理し、作業前にご確認いただける状態にします。」

納期延長のお願い

「ご提示いただいた追加要件に対応するため、現行の納期を[日数]日延長させていただけますでしょうか。品質を担保し、想定外の手戻りを避けるためのご相談です。」

著作権表記・ポートフォリオ相談

「本件の成果物の一部を、実績としてポートフォリオに掲載したく存じます。機密情報は伏せ、事前に掲載イメージをご確認いただいたうえで進めます。可否をご教示ください。」

未払い防止と督促の一言

「ご請求書の支払期日が本日でございます。入金予定日をご共有いただけますと幸いです。難しい場合は、分割や期日の再設定など代替案もご提案いたします。」

ケース別の条文アレンジ

ライティング案件に向く書き方

記事制作では「完成」の定義が揺れがちです。校了の基準、修正回数、公開後の直しの扱いをセットで決めます。
条文例:
「本件成果物は[媒体名]に掲載する記事とし、字数は[◯◯◯◯字±10%]、トーン&マナーはガイドに従う。初回提出後の修正は[見出し再構成1回・本文修正2回]を上限とする。公開後の軽微な誤字脱字は[納品後7日以内]に限り無償で修正する。」
相手のSEO要件が強い場合は「検索意図・想定読者・主要キーワード・必須見出し」を別紙に。画像の出典や引用ルールも併記しておくと無用な差し戻しが減ります。

デザイン案件に向く書き方

「どこからが追加費用か」を明確に。
条文例:
「デザイン案は[1案]を提示し、軽微修正は[3回]まで。大幅変更(配色・レイアウト骨子・構成の再設計)は仕様変更とみなし、別途見積りのうえ着手する。最終納品データは[.png/.jpg]、編集データ[.fig]の提供は追加費用[◯◯円]にて可能。」
コンポーネント単位での引き渡し(ボタン、カード等)や、デザインシステムの作成有無を最初に指定。フォントライセンスの帰属と配布可否は別紙リストで共有します。

エンジニア・アプリ開発に向く書き方

準委任か請負かで管理の前提が変わります。請負であれば検収基準とテストを明記。
条文例:
「実装完了の判定は、ユニットテスト・結合テストの合格およびステージング環境での受入テスト通過をもって行う。受入テストケースは別紙に定義し、逸脱した指摘は仕様変更として扱う。」
ソースの権利は「業務で作成した汎用ライブラリは制作者帰属、固有ロジックは発注者帰属」など切り分けると、再利用の余地を残せます。保守の稼働保証(SLA)や障害対応の時間帯も合わせて条文化します。

動画編集・配信に向く書き方

「ラフ→本編集→書き出し」の各段階で確認ポイントを固定します。
条文例:
「初回ラフ(構成・尺・BGM案)承認後の構成変更は追加見積り。素材の著作権は提供者に帰属し、BGM・効果音はロイヤリティフリーのライセンスに従う。出力は[H.264/4K/29.97fps]、サムネイル1点を含む。」
生配信では回線・会場音響など外部要因のリスク分担も記載すると平時の会話が短くなります。

コンサル・運用型(準委任)に向く書き方

成果物より「役務の内容」と「可用時間」を中心に。
条文例:
「月間稼働上限は[◯◯時間]、対応時間帯は[平日10:00–18:00]。成果物の有無を問わず時間計上する。ミーティングは[週1/60分]を上限とし、追加は時間外として扱う。」
KPIコミットではなく「助言・実行支援」に範囲を限定しておくと、数字の責任境界が鮮明になります。

見積書・合意メモの実例

見積の内訳は“作業線表”に落とす

単価の妥当性は「内訳の見える化」で納得されます。
例:
・要件整理(2h×◯◯円)
・ワイヤー(6h×◯◯円)
・デザイン(1案/固定◯◯円)
・実装(12h×◯◯円)
・テスト/修正(4h×◯◯円)
・管理費(小計の10%)
時間単価が出せない場合は「固定×成果」の型で。追加費の係数(夜間25%増、特急40%増)を料金表に入れておくと、その後の判断が速くなります。

合意メモのテンプレと版管理

合意メモは1枚に集約して“版”を付けます。
項目例:案件名/成果物の定義/除外事項/マイルストーンと担当/納期とタイムゾーン/検収基準/修正回数/著作権と利用許諾/第三者素材の扱い/報酬・支払サイト/連絡SLA/変更時の手順/秘密保持/有効期限
ファイル名は「2025-08-17_案件名_合意メモ_v1.2」のように日付と版を前に。チャットスレッドの最上部に固定(ピン留め)し、更新時は「v1.3→v1.4の差分」だけを短文で共有します。

チャットでの証跡化テクニック

・結論→理由→影響→同意要否の順で短文化
・重要決定は“引用返信”で文脈ごと残す
・スレッドを「以上で確定とします。異議なければ◯/◯ 12:00に着手します。」でクローズ
・音声会議の要点は3行サマリにしてそのまま貼付
こうした習慣は、後日の「言った言わない」を静かに消します。

発注フォーム(Googleフォーム/Notion)の項目例

目的/KPI、想定ユーザー、必須機能・要素、参考URL、予算上限、希望納期、承認者、素材の有無、公開先、禁止事項、連絡先、請求先。フォームで“禁止事項”を先に聞くと、暗黙の地雷を早めに避けられます。

ケーススタディで学ぶ未然防止

仕様膨張を止めた一手

LP制作で途中から「記事も3本追加で」と頼まれた事例。合意メモの「除外」に“記事制作”を置き、変更手順の条文に従って影響見積りを提示。結果、LPを優先し記事は翌月に分割。反論として「まとめて依頼したほうが効率的」と言われがちですが、同時着手は品質と納期の両方のリスクが増大します。段階化の提案で、納品遅延と品質低下を抑えられます。

検収すり抜け問題の解決

小規模アプリで「検収期限が過ぎても気づけなかった」との声に対し、納品時に「受入テストシート」とチェック項目を同梱。期限の前日リマインドを自動化(カレンダー通知)し、既読のない場合は納期延長の提案テンプレを送付。結果、検収が習慣化し、無償の“終わりなき微修正”が激減しました。

著作権帰属の勘違いを回避

「支払ったのだから編集データも当然」と誤解されやすい領域。見積段階で「成果物=書き出しデータ」「編集データ=追加費用」と分離提示し、納品前に再確認。反発を避けるには、編集データの提供価値(将来の改修容易性)と作成コスト(整理・権利確認)を並べて説明すると、納得感が高まります。

緊急依頼・深夜対応の線引き

「今日中に欲しい」は避けられません。料金表に“特急係数”と“営業時間外加算”を明文化し、時間外は可否を即答。どうしても受ける場合は「完成の定義を狭める」「品質保証を限定する」条件をセットで提示し、翌営業日に是正枠を用意します。

取引条件表を一枚で整える

伝えるべき項目と例

・対応時間:平日10:00–18:00(JST)
・一次返信:1営業日以内/緊急は電話
・標準納期:初稿5営業日〜、最終10営業日〜
・修正回数:軽微3回まで
・追加費用:方向性変更=再見積り/特急×1.4/時間外×1.25
・キャンセル:着手後=着手金100%/初稿後=小計の70%
・権利:書き出しデータは譲渡、編集データは別費用。実績掲載は事前承認のうえ可
この「ひと目でわかる表」を常備し、見積と合意メモに毎回添付すると、交渉の摩擦がほぼ消えます。

よくある“空白”を埋める

支払サイト(例:月末締め翌々月末)を先に書く、振込手数料の負担(発注者負担)を明記、遅延損害金の上限(年◯%)を置く。微差ですが、最後の段で揉める“粒”をあらかじめ拾えます。

最終チェックリスト

契約前に確認すること

・目的/KPIと優先順位は合っているか
・成果物の定義、除外、受入基準は書けているか
・マイルストーンと承認期限は入っているか
・著作権と編集データの扱いは分離しているか
・第三者素材と生成AIの開示方法は決まっているか
・料金表、特急・時間外係数、キャンセル規定は提示したか
・支払サイト、手数料、遅延時の扱いは明記したか

実行中に守ること

・会議後3行サマリを即投稿
・変更要望は影響見積り→同意→着手の順に固定
・バージョン管理とファイル命名を統一
・レビュー日をカレンダーで共有し、前日リマインド
・決定事項はスレッドを「確定」で閉じる

納品前後の抜け漏れ防止

・凍結期間に入ったか、差し替えは緊急のみか
・検収チェックリストと期限を同梱したか
・編集データの扱いと金額を再確認したか
・ポートフォリオ掲載の可否を合意したか
・請求書を期日前に送付し、入金予定日を共有したか

まとめ

副業の契約は、センスではなく「整った段取り」で守れます。成果物・納期・著作権の三点を“言葉の箱”に入れ、除外や検収の基準までセットで並べれば、修正無限地獄も納期の迷子もぐっと減ります。今日つくった雛形は、次の案件でさらに磨けます。まずは直近のやり取りに合意メモを1枚添え、ピン留めしてみてください。小さな一歩ですが、信頼は積み上がり、単価も上がっていきます。焦らず、しかし確実に。あなたの仕事を守る言葉を、今ここから整えていきましょう。

  • この記事を書いた人

あすな

WEB制作歴10年。 会社員でWEBクリエイターとして勤務。 デジタルガジェット、WEB技術、投資、ライフハックに興味があり現在複数のブログを運営中

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