タスクを「見える化」できると、頭のモヤがすっと晴れます。
Notionのボードビューは、やることをカードにして「どこまで進んだか」を一目で把握できる仕組みです。
本稿では、誰でも再現できる最小構成から、優先度の自動計算、プロジェクト連携、定例ミーティング運用までを段階的に解説します。
紙の付箋のようにサクッと並べ替えられ、今日のフォーカスも自動で浮き上がるので、迷いが減り実行が進みます。
個人でもチームでも使える設計図を提示し、具体的なプロパティ名や式まで手を動かしやすい形で紹介します。
「タスクが散らばって期限が曖昧」「結局なにからやるか決められない」といった悩みが、ボードを起点にぐっと軽くなるはずです。
スマホでもPCでも同じ見た目で稼働するので、移動中に状況を確認するだけでも効果が出ます。
なぜ“見える化”するのか
視覚で流れをつかむ
人はリストよりも流れで物事を理解しやすいと言われます。
ボードは「未着手→進行中→レビュー→完了」という流れを横方向に提示し、どこが詰まっているかをぱっと示します。
ゴールへの距離感が視覚化されるため、着手のハードルも下がります。
認知負荷を減らす仕組み
同じ情報でも、分類と並び順が決まっているだけで検索コストが下がります。
Notionのボードはカードに必要最小限の属性だけを表示し、詳細は開いたときだけ見る構造なので、注意散漫を防げます。
「いま意思決定に必要な情報だけ見る」を徹底できるのが強みです。
ボトルネックの発見
列ごとの枚数差や滞留日数を見れば、業務の詰まりが見えます。
例えば「進行中」が膨らみやすいなら、着手制限を設けるなど対策をカチッと決めます。
視覚化は対話の土台にもなるため、チームの合意形成が早まります。
設計図を描く
列(ステータス)の基本形
まずは列を最小限で設計します。
推奨は「バックログ」「準備中」「進行中」「レビュー中」「完了」です。
個人利用なら「待ち(他者依存)」を追加し、止まっている理由が見えるようにします。
カードに載せる属性
次のプロパティを用意します。
ステータス(Select)、期限(Date)、優先度(Select:高・中・低)、タグ(Multi-select)、見積(Number:h)、実績(Number:h)、担当(People)、親プロジェクト(Relation)、メモ(Text)です。
この組み合わせだけで、管理と振り返りに必要な粒度を担保できます。
命名と色のルール
「列の名前は動詞で統一」「優先度の色は信号機配色」などのルールを先に決めます。
Notionは色が情報になりますが、意味が揺れると混乱します。
最初に小さなガイドラインを用意すると、後の迷いがすっと減ります。
タスクデータベースの最小構成を作る
新規データベースを作成
空ページで「データベースを追加」→「テーブル」を選びます。
タイトルを「タスク」にし、既定の「Name」プロパティを「タスク名」にリネームします。
そのまま後段のボード表示に使うため、必須プロパティを先に追加します。
必須プロパティを追加
ステータス(Select)に「バックログ/準備中/進行中/レビュー中/完了」を登録します。
期限(Date)はタイムゾーンに注意し、終日と時刻付きの使い分けを決めます。
優先度(Select)は「高/中/低」、見積と実績は「時間」単位でNumberにします。
担当(People)、タグ(Multi-select)、親プロジェクト(Relation)も追加します。
入力テンプレートを用意
タスクDB右上の「新規」→「テンプレート」を作成します。
デフォルトでチェックリストと記述欄、ひな形のサブタスク表(簡易テーブル)を入れておくと毎回コピペが不要です。
「よく使うタグ」や「初期ステータス=バックログ」を自動入力にしてサクッと登録できるようにします。
ボード表示で“見える化”する
ステータスでグループ化
「ビューを追加」→「ボード」を選び、「グループ:ステータス」を指定します。
列は左から右へ進捗順に並べ、バックログは左端に固定します。
「不明なステータスを非表示」にチェックし、散らかりを防ぎます。
カードに表示する情報を絞る
「カードプレビュー」で「プロパティ」を選び、期限・優先度・見積だけを表示します。
担当やタグは詳細を開けば見えるので、ボードでは省きます。
表示を削るほど、重要度の高いカードがぐっと浮き上がります。
フィルターとソート
フィルターで「ステータスは完了ではない」「期限は過去7日以内または今後14日」などを設定します。
ソートは「優先度(高→低)」「期限(早い→遅い)」「見積(小→大)」の順を推奨します。
視界に入る順番が意思決定を誘導するため、並び順に意図を持たせます。
WIP(仕掛かり)制限の運用
Notion自体に枚数制限はありませんが、運用ルールで代替できます。
例えば「進行中は3枚まで」「レビュー中は担当1人あたり2枚まで」のように明文化します。
定例時に過去週の平均滞留枚数を見直し、制限値をキュッと調整します。
期限と今日のフォーカスを見える化
期限未設定の棚を作る
フィルターで「期限が空」を抽出するビューを作り、名前を「期限未設定」にします。
ここだけ週1で必ずゼロにする運用にすると、期日漏れが激減します。
人は「空欄」を見落としがちなので、専用の棚で可視化します。
今日やることビュー
フィルターで「期限が今日または明日」「ステータスが完了ではない」を条件にしたボードまたはリストを「今日」と命名します。
1日の始まりにここから最大3件だけ「進行中」に移すと、着手が軽くなります。
時間が余ればバックログから追加し、足りなければ翌日に送ります。
リマインダーとボタン
期限プロパティにリマインダーを設定し、開始の30分前に通知するのが基本です。
加えて「ボタン」プロパティで「開始」を作り、押すとステータスを「進行中」、開始時刻を自動入力するアクションを設定します。
着手の合図がワンクリックになると、先延ばしがじわりと減ります。
フォーミュラで優先度をスコア化
残日数の式
数値は判断を助けます。
Formulaで「残日数」を作り、次のような式を入れます。
dateBetween(prop("期限"), now(), "days")
今日を0としてマイナスが期限超過、プラスが余裕日数です。
視覚上はバッジ風に短く表示するのが見やすいです。
緊急度×重要度の式
「優先度(Select)」「残日数」「見積」からスコアを作ります。
例として、次のロジックが扱いやすいです。
・優先度:高=20点/中=10点/低=0点。
・残日数:0日以下は+30点、1〜2日は+20点、3〜5日は+10点、それ以上は0点。
・見積:大きいほど着手しにくいため、3h超は-5点、1h未満は+5点。
合計点の高い順でソートすれば「先に片づけるべき順」がぱっと並びます。
色分けとバッジの工夫
スコアが30点以上なら赤、20点台はオレンジ、それ未満はグリーンのように色を割り当てます。
ボードではカード名の前に「[🔥]」「[⚠️]」「[✅]」のような記号を自動で付けるFormulaを作ると視認性が上がります。
記号は多用しすぎず、意味がぶれないようにルール化します。
プロジェクト連携と進捗バー
リレーションとロールアップ
「プロジェクト」DBを別に作り、タスクDBからRelationで関連づけます。
プロジェクト側にRollupで「タスク数」「完了タスク数」「期限最遠日」などを集計します。
1ページを開けば全体の健全性がすっと把握できます。
進捗バーの作り方
プロジェクトDBにFormulaで「進捗率=完了タスク数/タスク数」を計算します。
さらにBar表示の擬似表現として、repeat("█", round(prop("進捗率") * 10)) を使い、10段階の簡易バーを作る方法が視覚的です。
ミーティングではこのバーを基準に議論すると、主観のズレが減ります。
親ボードでの集約
プロジェクトごとのタスクを横断する親ボードを用意し、グループを「プロジェクト」、並び順を「スコア降順」にします。
各列の上に「今週の目標」ブロックを置き、合意した重点項目をテキストで明記します。
数字とテキストを併置することで、意思がぐっと揺らぎにくくなります。
チームで使うときの運用
定例ミーティングの回し方
週次で30〜45分の定例を設定し、アジェンダはボードを上からなぞるだけにします。
冒頭5分で「完了」の称賛、中盤20分で「詰まりカード」の障害除去、終盤10分で「今週の3本」を選定します。
時間箱を決めるだけで、会議がだらだらしにくくなります。
スイムレーンの代替
Notionのボードは列でのグループ化が基本です。
担当者ごとに横のスイムレーンを引けない代わりに、ビューを「グループ:担当」で切り替える方法が現実的です。
「担当ビュー」「ステータスビュー」をタブのように並べ、目的に応じてサクッと切り替えます。
権限と変更管理
メンバーには編集権限、周辺の関係者には閲覧権限だけを付与します。
ステータスは誰でも変更できるが、列の追加やテンプレート編集は管理者だけに絞ると秩序が保たれます。
変更は「変更履歴」ページに簡単なログを残し、合意の透明性を担保します。
テンプレートと自動化
テンプレートボタンで標準化
「週次レビュー」「記事制作」「リリース作業」など、型が決まった仕事はテンプレート化します。
チェックリスト、期待成果、完了条件、レビュー観点をあらかじめ入れておくと抜け漏れが減ります。
押すだけで必要なカードが生成されるため、立ち上がりがキビキビします。
繰り返しタスクの扱い
「毎週」「毎月」などの繰り返しは、テンプレート+日付の相対指定で再発行する方法が管理しやすいです。
終了時に次回分を自動生成するボタンを置き、完了のたびに次回が用意される流れにします。
日付は「次の月曜」など相対入力を活用すると、更新がすっと楽になります。
外部ツール連携の考え方
チケットや日程は他ツールにあることも多いです。
最初はNotion内に「ハブ情報」だけを持ち、外部IDとURLをプロパティで紐づける軽量連携を推奨します。
連携は便利ですが、同期トラブルが起きると運用が重くなるため、段階的に導入します。
よくあるつまずきと対処
列が増えすぎて迷子になる
進捗の段階と状態の理由を混在させると列が肥大化します。
「進捗の列は5前後に固定」「理由はタグで持つ」に切り分けるとスリムになります。
迷った列は週次で畳み、タグへ移すのがコツです。
期限が守られない
期限は「決めるだけ」では機能しません。
「今日ビューで3つだけ着手」「期限超過は朝一で理由を記録」の2点をセットにすると改善します。
守れなかった理由が可視化されると、次の計画がぐっと現実的になります。
進行中に溜まって動かない
仕掛かりを減らすのが最短の改善です。
WIP制限と「レビュー枠の確保」を意識し、午後の30分はレビュー専用にするなど、時間箱をあらかじめ確保します。
動かないカードは「ブロッカー」タグを付け、定例で優先的に解消します。
まとめ
タスク管理ボードの価値は、状況と判断を一画面に集約し、迷いを減らすことにあります。
最小構成の列と必要十分なプロパティ、優先度スコア、今日ビュー、プロジェクト連携という骨格を押さえれば、個人でもチームでも機動力が出ます。
まずはテンプレートを整え、今週の3件だけを「進行中」に置いてみてください。
カードが右へ動くたびに、小さな達成感があなたの実行力を後押しします。
一歩目は軽く、次の改善は小さく、でも着実に前へ進みましょう。
※本稿の手順はNotionの標準機能で再現可能な範囲に絞っています。
運用に合わせて名称や色は自由に調整し、チームの言語に最適化してください。