未経験からWebマーケに挑むとき、最初の壁は「語れる実績がない」ことです。そこで力を発揮するのが、自分でテーマを決め、計測し、成果物まで公開する“自走案件”。通勤のすき間時間で小さく始められ、月1万円ほどの予算でも効果検証は可能です。カチッと指標を置き、仮説→実行→学びを繰り返せば、面接での説得力は段違いに上がります。コツは、やみくもに作らず「採用側が再現性を判断できる形」に整えること。この記事では、30日で最初の実績を作る設計図から、集客・広告・収益化・レポート化まで、明日から回せる手順をまとめました。カレンダーに落とし込み、サクサク進めましょう。
自走案件とは何か:採用担当が評価する「再現性」の証明
なぜ未経験は実績がないと落ちるのか
企業が欲しいのは「学習熱心な人」より「任せた仕事を再現して回せる人」です。面接では、感想ではなく指標で語れるかが問われます。例えば「SNSを頑張った」より「28日で投稿42本、プロフィール改修2回、フォロワー+312、プロフィール遷移率12.3%→19.7%」のほうが判断しやすいからです。未経験でも、自走案件でこれを示せます。
自走案件の定義と3条件(価値・測定・公開)
自走案件とは「目的を持って自ら設計・実行し、結果と学びを公開するプロジェクト」です。条件は3つ。①対象者に価値があるテーマであること、②成果が測定できること(KPI/KGI/期間/予算を事前に明文化)、③プロセスと結果を公開すること(ポートフォリオやNotionで時系列)。この3点が揃うと、採用側は再現性を評価できます。
雇用側が見るポイント(仮説→施策→結果→学び)
選考では「仮説」「施策」「結果」「学び」の整合性が見られます。仮説はペルソナ・課題・打ち手・期待値を1枚に。施策は実行ログと変更履歴。結果はチャネル別・原単位(1件獲得あたりのコスト/時間)で整理。学びは“負け筋”も含め次回の改善に接続。これだけで、未経験の弱みが一気に薄まります。
30日で最初の実績を作るミニプロジェクト設計
テーマ選定のコツ(需要×得意×在庫データ)
テーマは「需要(検索・SNS話題)×得意(自分の知識・興味)×在庫データ(集められる数字)」で決めます。例:副業ノウハウ、近所のコーヒー豆、学習アプリ比較など。迷ったら「自分が最近お金を使った領域」を3つ挙げ、検索ボリューム(関連キーワード)、SNSの反応、レビュー件数で絞ると外しにくいです。
KPIと計測の設定(GA4/UTM/Looker Studio)
30日で追うKPIは3つだけに絞ります。例:セッション、メール/LINE登録、コンバージョン(CV)。UTMで流入元を固定し、GA4でイベント計測、Looker Studioでダッシュボード化。日次で“差分”だけ見れば十分です。指標が多いほど迷走します。小さく正確に回すのがコツです。
スケジュールと予算(1日60分・1万円で回す)
平日30分×2、週末2時間で合計約30時間。広告費は上限1万円。週1で仮説見直し、週2でクリエイティブ差し替え、週3で投稿予約。“毎日やること”を固定化すると継続できます。費用はドメイン/サーバー/デザイン素材を含めてもミニマル。無料ツール中心で問題ありません。
実行ステップA:無料〜低予算でできる集客チャネル
SEOブログ(記事3本で仮説検証)
記事は3本だけ集中投入。「比較」「体験談」「問題解決(HowTo)」の型で書き、1本あたり見出しはH2/H3で設計。内部リンクとCTA導線を明確にします。タイトルは検索意図を1フレーズで表現し、導入でベネフィットを提示。リライト前提で公開速度を優先。月内はサーチコンソールのクエリ差分を見て、見出しと冒頭だけをこまめに微修正します。
SNS運用(X/Instagram/TikTokの当たり前)
SNSは“配信より検証”が主目的。Xは1スレッド/日+短文2本、Instagramはリール週4本、TikTokは短尺3本/週を目安に。出だし1秒で価値が伝わるテロップ、結論先出し、保存誘導を仕込むと回りやすいです。プロフィールは“誰に/何を/どんな変化”を固定。ハッシュタグは狭く深く。初期は反応率>フォロワー数で評価するのが現実的です。
メール/LINEミニリスト(登録50件を目指す)
小さなリストでもCV率は上げられます。登録特典を1枚に絞り、フォームは“名前(任意)+メール/LINEのみ”。週1のニュースレターで、記事/動画/おすすめの3点リンクを固定化。クリック率と返信件数を追えば、見込み層の温度が読めます。30日で登録50件が初期目標。LPはノーコードで十分です。
実行ステップB:小額広告とABテストで“勝てる型”を作る
1日500円の運用ルール(Google/Meta)
広告は“市場の反応を早く知るための顕微鏡”。日額500円×2配信から開始。Googleは検索・P-MAXのどちらか1系統、Metaは関心ターゲティングで1配信に限定。指標はCTR、LP到達率、CVと単価。7日単位で意思決定し、学習が終わる前に止めないのが鉄則。負けた面はスクラップして「何がダメだったか」を記録します。
クリエイティブの作り方(Canva/CapCut)
勝ちやすい構成は「ベネフィット1行→社会的証明→CTA」。サムネは“文字を大きく”と“比較要素”でクリックを稼ぎます。動画は最初の1秒で結論、3〜5秒で根拠、最後にCTA。静止画は3案同時、動画は2案同時でABテスト。撮影はスマホで十分、明るさとマイクだけ妥協しない、がコスパ最強です。
ランディング改善(2割ルールとヒートマップ)
LPは“上部2割”に全力投資。ファーストビューで「誰に・何が・なぜ今」を言い切り、フォームは分割。ヒートマップでスクロール到達率を確認し、離脱の谷を埋めます。CTAは1ページ2箇所まで。証拠(数値・レビュー・実物画像)を真ん中にまとめ、不要な装飾は削ります。読みやすさ>装飾が基本です。
実行ステップC:収益化の初速を出す3パターン
アフィリエイトでCVを1件取る
まずは“1件のCV”を最短で取りにいきます。訴求は比較記事と体験談を組み合わせ、CTAは“無料トライアル/サンプル請求/限定割引”などハードルの低いものを優先。記事末だけでなく、冒頭と途中にもCTAを配置。クリック→LP到達→CVのボトルネックを1つずつ潰すと、広告なしでも案件化の芽が育ちます。
note/デジタル教材のプリセール
自分の知見を小さく商品化。目次とサンプル1章を先に公開し、早割で予約販売。フィードバックを集めて構成を調整します。売上は少額でも“課題の確度”を測る材料になります。購入者アンケートで“買う直前の躊躇”を集め、LPの反論処理に反映させましょう。
近所のスモールビジネス支援(実地案件化)
喫茶店、美容室、学習塾などに“無料の診断+1施策だけ実装”を提案。見返りは「実行権と数値の公開許可」。チラシQR→LINE友だち追加→月次ニュースレター配信など、地味でも効く導線を1本作ります。これが最強の“他社実績”となり、書類選考の突破率が跳ね上がります。
【後半】
計測とレポート:見られる「1枚」と話せる「5分」を用意する
計測の仕込み(UTM命名・GA4イベント・目標の整合)
計測は最初の30分でやり切ります。UTMはチャネル(utm_source)、媒体(utm_medium)、クリエイティブ/オファー(utm_campaign)を固定命名し、毎回コピペで誤差をなくします。GA4では「LP到達」「スクロール90%」「CTAクリック」「フォーム送信」「CV」の5点をイベント化。イベント名は短く一貫させ、パラメータに「バリエーションID」を必ず持たせます。目標は「登録50件」「CV1件」のように数量・期間・前提を同時に書き出し、書いた紙(またはNotion)を毎日見る。迷いが消え、打ち手の精度が上がります。
日次・週次レビューの型(差分だけを見る)
日次は5分で「前日比の差分」だけ。セッション/LP到達率/クリック率/登録数/広告費の5指標に限定し、上振れ・下振れの“理由仮説”を1行で添えます。週次は30分で「勝ち筋・負け筋・保留」を3列に仕分け、来週の停止・継続・改善を決め切る。改善は「見出しの言い換え」「ファーストビューの証拠追加」「CTAの明確化」といった“軽い変更”を優先。大工事よりも小さな合算のほうが学びが濃くなります。
ダッシュボードの設計(1画面=意思決定)
ダッシュボードは1画面で「どこが詰まっているか」が分かれば十分です。上段にファネル(表示→到達→クリック→登録/購入)、中段にチャネル別の単価と率、下段にクリエイティブ別のCTRとCVR。色は「基準値以上=青、未満=グレー」の2色に抑え、赤を乱用しない。グラフは折れ線と棒に限定し、散布図は週次だけに。迷わないレイアウトにするほど、改善が早く回ります。
面接で映えるレポート話法(STAR/CARの骨組み)
面接では、ダッシュボードのスクショ1枚を見せつつ、「状況(S)→課題(T)→行動(A)→結果(R)」の順に5分で語ります。例:「登録率が1.2%で停滞(S)。ファーストビューが抽象的で“誰の何に効くか”が不明(T)。実証データを追記し、フォームを2分割、CTAを『無料テンプレDL』に変更(A)。登録率が3.9%に改善、広告単価も38%低下(R)。」数字で締め、学びを次回施策へ接続する一言が決め手です。
応用編:チャネル横断で“伸びるところだけ”育てる
コンテンツの再利用(リパーパス)と在庫化
1本の記事から、Xスレッド、リール、短尺、スライド、メール、LP証拠の6形態へ再利用します。手順は「要点3つ→見出し化→媒体ごとの“最初の1秒”を調整」。同じコアを複数の器に流すと、制作時間あたりの学びが跳ね上がります。保管は「タイトル|媒体|公開日|成果(CTR/CVR)」を並べた在庫表に集約。採用側は“体系化”を見ています。
ランディングとフォーム最適化(EFO)
EFOの初手は「入力の摩擦」を減らすこと。項目はメール/LINEのみ、住所・電話は外します。プレースホルダーではなくラベル明記、エラー文は“どう直せば良いか”を具体に。送信後のサンクスページに「次の行動(例:チェックリストDL/コミュニティ参加)」を提示し、ダブルオプトインを避けると離脱を抑えられます。細部の体験が、CVの土台になります。
オーガニック×広告の相乗
広告は拡声器、オーガニックは資産。まずオーガニックで“勝った見出し/切り口”を広告に移植し、CTRを稼ぎます。逆に広告で“勝った訴求”は記事タイトルとサムネに逆輸入。二方向の移植を週1回で回すだけで、成長曲線がなだらかに上向きます。判断は常に「同一期間・同一指標・同一オファー」で行い、混線を防ぎます。
B2B/B2Cで変えるべきポイント
B2Bは「導入後の業務変化」を具体化(例:工数-30%、ミス率-40%)、意思決定者と実務者の2段訴求を用意。コンテンツは導入事例・ROI計算機・比較表が主役。B2Cは「個人の変化」を描写(例:家計の安心、朝時間の余裕)、レビューやビフォーアフター写真が効きます。どちらも“証拠の質”がCVRを決めます。
倫理・法務・セキュリティ:知らないと損する“地雷回避”
表記・広告の注意点(景表法/薬機法/ステマ規制)
「断定的表現」「再現性の暗示」「過度な比較」は地雷です。効果が人により異なるものは“個人の感想”である旨と根拠の範囲を明示。医薬的効能の表現は避け、機能面の説明に言い換えます。提供を受けた記事・投稿は「PR/広告」表記を冒頭に入れ、レビューは金銭や提供の有無を開示。透明性は信頼そのものです。
データとプライバシー(Cookie・個人情報・同意)
フォームで集めるのは最小限。プライバシーポリシーには収集目的、保存期間、第三者提供の有無、問い合わせ先を明記します。Cookie等のトラッキングは同意を取り、撤回方法をわかりやすく表示。名簿の外部持ち出しや社外PC保存は避け、アクセス権限は“必要最小限”に。安全運用が面接での評価ポイントになります。
著作権・商標・素材の扱い
画像/フォント/音源はライセンスを確認し、クレジット表記が必要なら明記。ロゴや商標はガイドラインに従い、勝手な改変をしない。引用は“必要最小限+出典明記+改変なし”を守ります。生成ツールの利用規約も確認し、配布可否や商用可否に注意。小さな手間が大きなトラブルを防ぎます。
実名・匿名とレビュー運用
実名発信は信用が早く積み上がる一方、炎上時のダメージが大きい。匿名は逆。決め方は「今の職場との関係」「家族の理解」「目的の時限性」。レビューは“スコア平均”よりも“改善に応じた履歴”を公開するほうが好感を得ます。削除依頼は原則行わず、誤情報のみ事実で対応します。
転職実践:ポートフォリオ→書類→面接→入社後90日
ポートフォリオの作り方(型を決めて埋めるだけ)
1案件=1ページの“時系列ドキュメント”がおすすめです。構成は「背景/目的→仮説→施策→結果→学び→次の一手」。各節にスクショと数値を1点ずつ添付し、最後に“担当外の協力が要る場合の段取り”を一段入れると、実務の目線に近づきます。案件は最低3つ(オウンド/広告/実地支援)を並べ、最初のページにサマリーと総括を置くと審査が速いです。
職務経歴書の書き方(未経験でも武器に変える)
「業務経験」欄は短く、「プロジェクト実績」欄を厚く。見出しは“役割×成果”。例:「SNS運用(設計〜日次分析):28日で登録率1.2%→3.9%」「Google広告(予算1万円):CPA3,200円で初CV」。使用ツール、指標、意思決定の根拠を一行で添えます。資格より“どう数字を動かしたか”が評価されます。
面接10分プレゼンの流れ(再現性の証明)
冒頭1分で自己紹介と“得意テーマ”。3分で案件AのSTAR、3分で案件Bの反省と改善、2分で入社後90日の貢献計画、1分で質疑の受け皿。スライドは6〜8枚、1枚1メッセージ。最後の1分は「御社の○○事業で、最初の30日でやること」を箇条書きで宣言。これだけで“明日から動ける人”の印象になります。
入社後90日プラン(オンボーディングを自分で設計)
前半30日:既存データとチャネルの棚卸し、ダッシュボード整備、用語と意思決定のルールを吸収。中盤30日:仮説3本、A/B3本、週次レポート。後半30日:勝ち筋の横展開と簡易オートメーション(レポートの自動送付、投稿予約の標準化)。目標は「1つのKPIを10〜30%改善」か「再現性のある手順化を1本作る」。どちらかを必ず達成ラインに置きます。
よくある落とし穴とリカバリー:転び方を決めておく
目的が増殖して収拾がつかない
“いい指標を見つけるほど、やりたいことが増える”のは普通です。対策は「30日単位のスコープ固定」。今期は登録率だけ、次期はCVだけ、のように“ひと山ずつ”。未着手メモは「次期の候補」として別リストに避難。やらない決断が、最短距離をつくります。
数字の誤読(母数・期間・外部要因)
CVRが上がった/下がったときは、必ず母数と期間、外部要因(季節・競合キャンペーン・媒体仕様)をメモしてから判断。特に少数点以下の差は“偶然”のことが多い。7日移動平均で見る、週次で意思決定する、の2ルールでブレを抑えます。
ツール沼・教材沼に沈む
「新しいツール」を増やすほど、成果は遅れがち。まずは既存ツールの使い倒しで“不便さ”を感じてから追加します。教材は1本やり切り→すぐ実戦→戻って再学習の順。理解は手を動かした回数に比例します。
継続が切れる(システム化と仲間づくり)
人は意思では続きません。カレンダーに“曜日で役割”を固定し(例:月=仮説、火=制作、水=配信、木=振り返り、金=改善、土日=休む/まとめ)、タイムブロッキングを徹底。週1の進捗報告をSNSやコミュニティで宣言すると、外圧が味方になります。小さな達成を毎週1つだけ書き出すと、燃え尽き防止に効きます。
ネガティブ反応・炎上が怖い
批判は“無料の品質テスト”。感情に反応せず、事実と規約に照らして淡々と対応。ミスは早期に認め、修正内容と再発防止をセットで公開します。誹謗中傷は記録を残してプラットフォームの規定に沿って処理。「反応を取りにいくほど、反発も増える」を前提に、事前の合意形成(PR表記、根拠の範囲明示)で火種を小さく。
実績が“偶然の一発”で終わる
一発当てても“再現手順”がなければ評価されません。勝因を3行で言語化し、「再現テスト」を別テーマで1回だけ実施。条件を揃えて同水準が出れば、あなたの強みとして確定します。ここまで記録できていれば、未経験のハンデはほぼ消えます。
まとめ
未経験でも“自走案件”なら、30日で語れる実績は作れます。鍵は、需要のあるテーマを選び、KPIを絞り、UTMとGA4で差分を追い、勝ち筋だけを増やす設計にすること。そして、成果と失敗を“再現できる手順”として残すことです。ポートフォリオは3案件、書類は数字で、面接は5分のSTARで。次の一歩として、今日中に「テーマ決定・KPI・週次カレンダー」を1ページに書き出してください。小さな一歩が未来の肩書きを連れてきます。あなたの“最初の一件”は、もう手の届くところにあります。